「日本の潜在力を解き放つべき」 マイク・ポンぺオ元国務長官が明かす「トランプ大統領の真意」

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バイデン政権の最大の問題点

 そして近年、ヨーロッパ諸国もまた、ウクライナ問題において自らが主導的な責任を担うべきだという現実に、ようやく向き合い始めている。

 東ヨーロッパの紛争(ウクライナ戦争)は、いまや国際的な性格を帯びた大規模な衝突へと発展している。イラン製の無人機がウクライナ上空を飛び交い、北朝鮮の兵器が前線で使用され、中国はロシア産原油を購入しながら、軍事転用可能な先端技術の提供も続けている。

 こうした状況下でプーチンに勝利を許すことは、世界の権威主義体制や独裁者たちを勢いづかせることにつながる。とりわけ習近平は、西側諸国が覇権への挑戦に対抗する意志も備えも欠いていると受け取るだろう。

 バイデン政権の対ウクライナ政策における最大の問題点は、必要以上に「やらないこと」を自ら明言してしまったことだ。

 ロシアの報復やエスカレーションを過度に恐れるあまり、同盟国と自国に対して不必要な制約を課してきた。武器の提供は適切なタイミングを逸し、提供後も使用範囲に制限が設けられ、ウクライナの攻勢を大きく妨げることとなった。

 ロシアの軍指導部にとっては、まさに理想的な展開だった。われわれの限界と意思を冷静に見極める絶好の機会を得たからだ。

米国や同盟国が弱さを見せれば……

 中国との対立は、単なる戦場での衝突にとどまらない。その影響はサイバー空間、経済、技術、エネルギー、さらには宇宙や重要インフラにまで及ぶ広範なものだ。

 実際、中国が台湾や他の地域で領有権を巡って圧力を強め、緊張が急激に高まった際には、それが直ちに世界経済に深刻な影響をもたらした。象徴的だったのは、米デトロイト市の自動車組立ラインで部品供給が止まり、3カ月近くも1台の車すら製造できなかった事件だ。

 このような現実を踏まえると、バイデン政権の「戦略的曖昧さ」はリスクを軽減するどころか、かえって不確実性を増大させる要因となっている。

 事実、習近平は第2次トランプ政権になって、台湾問題に対して慎重な姿勢を保っている。

 第1次トランプ政権の4年間は、世界各地における米国の利益を守るため、いわゆる「ジャクソニアン・リアリズム」(ジャクソン大統領時代に特徴的な政治的な体制や理念――アメリカの国益を最優先し、他国との交渉や協力より自国の強みを生かして国際社会における影響力を高めることを目指す)を体現し、その影響は今なお続いている。

 米国や同盟国が弱さを見せれば、敵対勢力はシステムの隙間を突き、われわれが対応しづらい領域で主導権を握ろうとするだろう。

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