自治会の役員をやると死亡率12%減、「田舎が健康長寿」はウソ… データが明らかにした「健康のための五つの原則」

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笑いはストレスホルモンを3割減らす

 煩(わずら)わしい面もある人付き合いが、どうして健康長寿に寄与するのかといえば、その要因の一つは「笑い」です。近年、笑うことによる健康効果が注目を集めていて、実際、笑いはストレスホルモンを約3割減らすことが、いくつかの研究を分析した「メタ解析」によって分かっています。また、私どもの疫学研究では、日常生活でほとんど笑わない人は、よく笑う人に比べると3年後に要介護になる可能性が2倍以上という結果が出ています。

 笑いは、他者とのコミュニケーションによって生み出されます。つまり、地域のイベントに参加して人と交流し、笑うことが、長野県の健康長寿に関係しているのではないかと考えられるのです。

 ちなみに、未婚、離婚、死別を問わず、パートナーのいない男性は、いる男性に比べて笑いの量が2分の1に減るとの調査結果があります。他方、女性はパートナーがいようがいまいが笑いの量は変わらず、また、パートナーではなく友だちと一緒にいる時に最も笑っているという調査結果も出ています。要するに、既婚者を考えた場合、男性は妻に「笑いの機会」を依存しているわけです。

 従って、本誌(「週刊新潮」)の読者にも多いであろう既婚男性にとっての健康長寿の秘訣(ひけつ)は、奥さんにできるだけ長生きしてもらうこと、つまり妻を大切にすることにあるのです。

大平哲也(おおひらてつや)
福島県立医科大学医学部疫学講座主任教授。1965年生まれ。福島県立医科大学卒業、筑波大学大学院医学研究科博士課程修了。医学博士。ミネソタ大学疫学・社会健康医学部門研究員、大阪大学医学系研究科准教授などを経て現職に。専門は疫学、公衆衛生学、予防医学など。『10000人を60年間追跡調査してわかった 健康な人の小さな習慣』『1日1回! 大笑いの健康医学』などの著書がある。

週刊新潮 2025年5月22日号掲載

特別読物「『医療×統計』のプロフェッショナルが解説する 日本人の『健康5大原則』」より

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