自治会の役員をやると死亡率12%減、「田舎が健康長寿」はウソ… データが明らかにした「健康のための五つの原則」

ドクター新潮 ライフ

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ジョギング、ジムを続けるのは難しい

 まず疫学とは、「病気が起こる原因や、どうすれば予防できるのかを、人の集団を対象として調べることにより明らかにする学問」と定義できます。平たく言えば、どのような環境にある人が病気になりやすいかの法則を調べ、その上で病気をもたらす環境を避け、改善することで、健康長寿を実現するための学問です。

 そして、CIRCSなどの60年超の疫学研究により得られた成果は、「健康意識を高く持つ」よりも、「そもそも健康になれる環境にいる」方が、実は健康への近道であるという事実です。この環境のことを、私は「勝手に健康になれる仕組み」と呼んでいます。

 例えば、適度な運動が健康に寄与することは、疫学上も明らかになっています。そこで、健康意識の高い人は、帰宅後に毎日ジョギングをし、あるいはジムに通うといった行動を取ろうと考えます。もちろん、全くもって悪い心がけではありません。

 でも皆さん、よく考えてみてください。仕事で疲れて帰ってから、ジョギングしますか? 1日、2日はできたとしても、毎日続けられますか? 私も含めて、多くの人には難しいというのが率直なところではないでしょうか。

「仕組み」を作る

 従って現実的には、「志高く運動に励む」よりも、「自然と運動する環境=勝手に健康になれる仕組み」に身を置く方が、健康長寿は実現しやすいということになるのです。

 WHO(世界保健機関)などが推奨しているのは、「1週間に150分の有酸素運動」です。歩行で言えば、「少し息が上がる程度」が有酸素運動に該当します。

 これを意識的にではなく、「仕組み」として行える環境、それは都市部です。車社会の地方は、どうしても「歩かない仕組み」になっています。事実、私は大阪の大学に勤務していた頃、平均で1日1万1000歩を歩いていましたが、福島の大学に来てから1日3000歩に減ってしまいました。

 今は家の駐車場から車に乗り込んで、職場である大学の駐車場まで移動するという、ほとんど歩かなくて済む環境で過ごしています。大阪勤務の頃は、自宅から最寄りの駅まで歩き、大学の最寄りの駅からも歩いていました。この「電車通勤という仕組み」こそが、私が「勝手に健康になれる仕組み」として機能していたのです。これとは逆に、地方在住者の運動量の少なさは、「車移動という仕組み」によってもたらされているのです。

 最寄り駅まで速足で歩いて15分の所に自宅があれば、自ずと往復で30分歩くことになる。それを月曜日から金曜日まで5日間繰り返せば150分。これだけでWHOが推奨する運動量をクリアできます。まさに、「勝手に健康になれる仕組み」です。

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