自治会の役員をやると死亡率12%減、「田舎が健康長寿」はウソ… データが明らかにした「健康のための五つの原則」

ドクター新潮 ライフ

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データが示す五つの原則

 そう言われても、現に地方で暮らしていて都市部に引っ越すなんてできない。そういう人は、別の仕組み作りに取り組めばいいのです。

 私の研究室は7階にありますが、エレベーターは使わずいつも階段を上り下りしています。1日3000歩に減ってしまった分を補うために、エレベーターは使わないという仕組みを自ら作ったわけです。また、研究室がある建物からできるだけ遠い駐車スペースに車を停め、「勝手に歩数が増える=勝手に健康になれる」環境に自身を置いています。慣れれば苦にはならないものです。

 ここまで運動と健康について紹介してきましたが、言わずもがな、ビッグデータから導き出された「日本人の健康の五大原則」は運動についてだけではありません。改めて五大原則を紹介します。

(1) タバコは吸わない。

(2) お酒は1日2合未満に控える。

(3) 塩分を減らしカルシウムを増やした和食を食べる。

(4) 座位時間を減らして適度な有酸素運動をする。

(5) 肥満を解消する。

「メカニズム」と「傾向」

 目新しいものはないと感じるかもしれませんが、これが60年超にわたる疫学研究によって明らかになった、本当に効果のある健康法の最終的な結論です。つまり、日本では(1)から(5)を実践できている人が、より健康で、より長生きできることが、ビッグデータ上、分かっているのです。

 ここであえて、こんな疑問を差し挟んでみたいと思います。(1)から(5)を実践できている人が“たまたま”健康だったというだけで、(1)から(5)の行動・習慣が人間の細胞レベルにどのような影響を与えているのか、そのメカニズムや因果関係がはっきりしなければ、信用できないのではないか、と。

 1854年、イギリス・ロンドンのソーホー地区でコレラが発生しました。当時はまだコレラ菌は見つかっておらず、現代の視点から正確に言えば、“コレラ風の症状”を訴える人が続出していたのです。

 この緊急事態に際し、ジョン・スノウという医師は、地図上で死者が出た家に印をつけ、印が集中している地区に一つの井戸があることに気付きます。当時、“コレラ風の症状”は経口感染ではなく、空気感染すると考えられていたものの、スノウはとにかくその井戸を閉じさせました。すると、感染は見事に終息。コレラ菌が発見され、空気感染ではなく水を飲むことで経口感染することが分かったのはそれから約30年後のことでした。その井戸は、「ジョン・スノウの井戸」として現在も保存されており、疫学の始まりの記念碑として扱われています。

「メカニズム」が明らかになるまで待っていては死者が増えるばかりだったところを、スノウは感染の「傾向」が分かった時点で対策を取り、感染拡大を阻止することに成功した。言ってみれば、メカニズムは後からついてきたのです。先の(1)から(5)は、ビッグデータに基づいた、まさに日本人が健康になれる「傾向」なのです。

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