自治会の役員をやると死亡率12%減、「田舎が健康長寿」はウソ… データが明らかにした「健康のための五つの原則」

ドクター新潮 ライフ

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塩を減らすのではなく、具を増やす

 では、例えば(3)を実践するには具体的にどうすればよいのか。ここでも「仕組み」がポイントです。

 私たち日本人の食卓に、みそ汁は欠かせませんが、みそは塩分が多い。けれども減塩を意識して、みその量を減らして薄味にしたり、舌になじまないのに減塩みそを使ったりするのに努めるのは、なかなか難しいでしょう。そこで、できるだけみそ汁は具だくさんにするという仕組みを作るのです。味は変わらなくても必然的に「汁」の量が減り、みそから摂取する塩分量が抑えられます。

 次に、(5)について説明します。まずは、肥満度と塩分摂取量の関係を調べると、きれいな相関関係を示すことを覚えておいてください。私自身、医師として、塩分摂取量は少ないのに肥満という人に出会ったことがありません。

「食べ過ぎる→肥満になる→血圧が上がる」というドミノが、現代の中高年の“トレンド”です。日本人の要介護になる原因の1位は認知症で、2位は脳卒中ですが、高血圧の人は認知症の発症リスクが2倍近くになるとのデータがあり、また高血圧を正常値に戻すと、4割ほどの脳卒中が防げることも疫学的に判明しています。つまり、ドミノの始まりである「食べ過ぎる→肥満になる」を防げば、高血圧になるのを避けられ、結果的に要介護リスクは減らせるのです。そして、先ほど申し上げたように肥満度と塩分摂取量は相関しますから、「具だくさんみそ汁」という仕組みは(5)にも有効といえるのです。

 続いて、五大原則以外で、疫学が明らかにした健康につながる習慣を紹介したいと思います。その一つは「他者とのコミュニケーション」です。

自治会役員をすると死亡率が低減

 再び、都道府県別の平均寿命の話に戻ります。現在、私が暮らす福島県は、残念ながら男女共にワースト3に入っています。一方、「関東地方と隣り合わせの県」で、面積も広いなど似た条件にありながら、長野県の平均寿命は男性が2位、女性は4位となっています。塩分摂取量や運動量はさして変わらないのに、片や長野県は健康長寿の優等生で、福島県は劣等生。違いはどこにあるのでしょうか。長野県は喫煙率が低く、メタボリックシンドロームの割合が少ない。そして何よりも、住民組織による地域活動が活発な点が影響しているのではないかと私は分析しています。

 事実、長野県は小さな自治体が多く、村の数は都道府県別で最多の35もあります。その分、各自治体内での結び付きが強く、例えば消防団の活動などが活発だといわれています。一方、福島県は、もちろん場所によって差はあるものの、地域内のコミュニケーションがそれほど密でもないところがあるようです。

 いずれにしても、他者とコミュニケーションを積極的に取り、集団内で何らかの役割を担うことは、健康長寿にとって、とても重要であることが分かっています。日本人の高齢者を対象にした日本老年学的評価研究(JAGES)では、自治会の役員をすると死亡率が12%低減するという結果が出ているのです。

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