次の韓国大統領も「日本のせいで中国包囲網には加われない」と責任転嫁する――すでに張られた“伏線” 鈴置高史氏が読む

  • ブックマーク

舐められた謝罪派=イシバ

――脅せば日本は言うことを聞くとの目算があるのですか。

鈴置:目算というほどのものはなく、とりあえず脅してみよう、くらいの感じかと思います。石破茂首相は東亜日報に対し「韓国がいいと言うまで日本は謝るべきだ」と繰り返し語っています。

「『韓国が納得するまで謝る』イシバは“第2のハトヤマ政権”だ…尹錫悦が期待する根拠」をご覧ください。「弱腰の石破」が政権に就いたチャンスを韓国が見逃すはずがありません。任爀伯教授も日経に次のように述べています。

・故安倍晋三元首相が韓国に強硬だったので、石破首相のイメージはそれほど悪くはない。石破首相はそれ以前の首相とは少し異なり、実用主義的に向き合ってくるだろうと我々は考えている。

――石破首相も舐められたものですね。

鈴置:自業自得です。安倍政権を批判するために、朝日新聞などのリベラルに受けのいい「謝罪派」を演じて見せたツケが今、回っているのです。

 それに安倍首相はトランプ(Donald Trump)大統領と関係が極めて良好だったので、韓国は日本に対し「米国のテコ」を使えなかった。一方、石破首相はトランプ大統領から露骨に小物扱いされている。

 初の首脳会談でも冒頭の28分間、日本の事務方がメモを入れて阻止するまでトランプ大統領は「頭撮り」を続け、石破首相を無視して記者団と会話を続けたのです。「小物」を扱ういつものやり方です。文在寅(ムン・ジェイン)大統領に対しても30分間の会談予定というのに28分間、頭撮りしたことがあります。

 韓国人は他人の弱点を見抜くのに長けていて、必ず利用してきます。今、米国を後ろ盾に脅せば、日本は言うことを聞かざるを得ないとも判断したのでしょう。日本人とすれば、こんな時に総裁=首相に石破氏を選んだ自民党を恨むしかありません。

元祖は盧武鉉

――李在明外交は隅に置けませんね。

鈴置:「謝罪しない日本」を利用して中国包囲網に加わらないのは李在明氏の発明ではありません。韓国の常套手段です。日本人が日韓関係を「日韓」だけから見て「米中」の従属変数として考えないので、見落としているだけなのです。

 盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権(2003-2008年)も就任当初は日本との関係改善に積極的でした。しかし、米国が在韓米軍を中国牽制に活用しようとしたため突然、日本との関係を悪化させました。そして中国包囲網に加わらない理由に仕立て上げて行ったのです。 

 保守ながら「離米従中」路線をとった朴槿恵(パク・クネ)政権(2013-2017年)も、事あるごとに日本を侮蔑して見せ、日韓関係の悪化に務めました。

 もっとも当時、米国の副大統領だったバイデン(Joe Biden)氏は「本当は中国と敵対する根性がないだけ」と朴槿恵大統領の反日の真意をすっかり見透かしていましたが。

 従北従中の左派、文在寅政権(2017-2022年)も当然、離米従中に反日カードを活用しました。親米路線であるがゆえに反日カードを使えなかったのは李明博(イ・ミョンバク)政権(2008-2013年)と尹錫悦政権(2022-2025年)だけです。

 ただ、李明博大統領は任期末にレームダックに陥った時に、竹島に上陸して人気回復に努めたことはありました。

 日韓関係を悪化させることで米国との同盟の義務から逃げまくる韓国に関しては『韓国消滅』の第4章で詳述しています。この章の見出しを「日本との関係を悪化させたい」としたのもそのためです。

次ページ:「日本と仲良くしたい」

前へ 1 2 3 4 次へ

[3/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。