次の韓国大統領も「日本のせいで中国包囲網には加われない」と責任転嫁する――すでに張られた“伏線” 鈴置高史氏が読む
絶対に日本の責任を問う
――「李在明の韓国」は米中間で板挟みになること必至です。どうするつもりでしょうか。
鈴置:奥の手があります。米国の前では「同盟強化」の旗を掲げて見せる。もし、具体的な軍事協力を求められたら「韓米軍事協力は日本との軍事協力につながる。だが、歴史問題で謝罪しない日本との協力は国民感情が許さない。したがって米国とも協力できない」との屁理屈をこねるつもりでしょう。
すでに伏線を張っています。李在明候補は5月9日、日本に対する討論会に以下のような祝辞を寄せました。聯合ニュースの「李在明氏『日本は重要なパートナー』 韓国大統領の有力候補」(5月9日、日本語版)から引用します。
・日本は韓国の4番目の貿易相手国であり、両国の安全保障協力は北東アジアの平和と韓国の繁栄をけん引してきた韓米日の安全保障同盟の基盤でもある。
・今、韓国は地政学的な秩序の大転換期に立っている。緻密かつ繊細な外交解決策で両国の友好関係を強化し、国益を得なければならない。
――日本との安保協力を肯定的に評価しましたね。
鈴置:米国を意識してそう言っているだけです。祝辞には続きがあるのです。
・両国の前には依然として過去の歴史、福島の汚染水放出など複合的な課題が残っている。特に歴史問題は未来志向的な関係構築のため必ず解決しなければならない課題だ。
・対話と協力を通じた相互尊重と信頼、責任ある姿勢が伴ってこそ韓日関係はさらに成熟することができる。
植民地支配の不法性を認めさせる
――なるほど!「歴史問題は必ず解決すべき問題」と来ましたね。
鈴置:「歴史問題では一歩も引かない」との意思表明です。つまりは日本との安保協力の拒否、引いては米国との軍事協力の暗黙裡の否定です。
李在明陣営の外交ブレーンである高麗大学の任爀伯(イム・ヒョクベク)名誉教授も日本経済新聞のインタビューに答え、以下のように語っています。
「李在明氏の外交、米韓同盟軸の『実用主義』 陣営ブレーンに聞く」(5月19日)から引用します。
・過去の問題は非常に難しい。共に民主党は歴史問題の解決を重要なアジェンダと考えている。そのため日本が真摯な態度をとらないと強硬な立場を取る議員が出てくる。未来志向的な協力関係を構築することが難しくなる。
日本が言うことを聞かないと首脳会談も開いてやらないぞ。それでいいのか、との脅しでしょう。韓国は今、国を挙げて植民地支配は不法だったと日本に認めさせようとしています。
日本企業に対し、いわゆる元「徴用工」に賠償金を払わせたり、日本政府には元「従軍慰安婦」に対し賠償させる形で、搦め手から「不法性」を認めさせる手口です。
日本は岸田文雄政権でさえ、これを認めなかった。韓国は元「徴用工」や元「慰安婦」を利用して日本との対立を表面化させ、米国と軍事協力できない、と言い張る可能性が高い。
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