秋の新米はさらに値段が上がる? 備蓄米放出の効果は「ほぼ影響なし」 背景に深刻な「肥料問題」が
高温障害を避けるには
高齢農家の引退を早めかねない要素として、二つ目の温暖化による夏場の「高温」がある。猛暑で熱中症のリスクが高まるのはもちろん、イネの生育にも悪影響を及ぼす。
この高温障害の代表的なものに、でんぷんが十分蓄積せず、米粒が白く濁る白未熟粒(しろみじゅくりゅう)がある。白未熟粒を炊飯すると、のりのように溶け、ベチャベチャした炊き上がりになってしまう。ほかに、高温と乾燥により粒が割れる胴割れもある。精米すると砕けやすく、ごはんの食味を損ないやすい。
高温障害を避ける方法は大きく二つある。(1)高温の回避、(2)高温に耐える「高温耐性」の強化――だ。高齢な農家ほどこの二つに対応できない。
「高温の回避」には、高温障害の発生しやすい発育段階の時期が猛暑と重ならないように作付けを遅らせる「遅植え」や、収穫の遅い晩稲(おくて)の品種に変えるなどの方法がある。「高温耐性の強化」は、高温に強い「高温耐性品種」を選ぶほか、夏場の高温で肥料が切れて高温障害が出ないよう、生育の途上で肥料を足す「追肥(ついひ)」をする方法がある。
高齢な農家は変化に及び腰
いずれも長年必要性が叫ばれてきたものの、普及しているとは言い難い。高齢な農家ほど、栽培方法や品種を変えることに及び腰で、「コシヒカリ」といった昔から作り慣れた品種を作りたがる。国内の作付け面積の約3分の1を占めるこの品種は、暑さに弱いことで有名だ。高温耐性品種の割合は、主食用の作付け面積の16.2%にとどまり、コシヒカリの半分に満たない。
残った選択肢が追肥である。ところが、これも難しいと新潟県長岡市の有限会社エコ・ライス新潟の豊永有代表取締役社長は話す。
「肥料の使用量を減らしたことが近年の高温障害の一因です。それには、肥料の価格が高騰していることに加え、農家が高齢化して、さらに夏場が暑いので、肥料をまかなくなっていることも関係しています。近所でも、肥料を買ったけど暑くてまけなかったという農家が何人もいますから」
豊永社長が述べる「三高」の一つ、「高騰」という問題も横たわる。肥料や農薬といった資材費が高騰し、結果、農家が肥料を節約。高温障害に拍車をかけたとみられる。
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