「オウム抗議の座り込みをすると、警察はわれわれを排除した!」 上九一色村で教団と対峙した村民が振り返る 「地下鉄サリンは防げた」

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全4回の第4回

 オウム真理教教祖・麻原彰晃の逮捕から今年5月で30年。地下鉄サリン事件は未曾有の大惨事となったが、その2年前、オウムはオーストラリアで極秘にサリンの実験を行い、さらには「核武装化計画」まで進めていた。現地で取材した報道記者が驚愕(きょうがく)の真相を明かす。

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 第3回【「大量の羊の死骸からサリンが…」「核兵器を本気で作ろうとしていた」 オウムがオーストラリアで進めていた驚愕の計画の全容】では、オーストラリアのウランが採れる牧場でオウムが進めていた「核兵器開発計画」、そしてサリンを使った動物実験が行われていた問題について、元オウム幹部や、当時オーストラリアで捜査に関わった元オーストラリア連邦警察長官の証言を基に報じた。

「清田さん、お手すきの時に事務所までお越し願えませんか、渡したいものがあるので」

“ヤメ検弁護士”から携帯に電話があったのは数年前のことである。東京地検特捜部にも在籍した元検察幹部だ。都内にある事務所に向かうと二十数枚ほどの資料を渡された。

「資料整理していたら出てきたものでね。私が持っていても仕方ないので清田さん、好きなようにしてください」

 最初は何のことやら話がつかめなかったが、「テロ事件捜査の観点から振り返るオウム事件捜査」という表題を見て引き込まれていった。地下鉄サリン事件から11年後、検察幹部を集めた捜査報告会で配られたレジュメで「秘」の印が押されたページもあった。検察庁内の会議室に数十人が集まり、オウム事件の捜査指揮をした検察幹部らの報告を2時間ほど、皆真剣に聞いていたという。

「刑訴法によるしかなかった戦争類似の国家的作用」

 冒頭の文章から検察の“苦悩”が透けて見えてくる。

「刑訴法の目的を超える発想で刑訴法による捜査。正確には刑訴法によるしかなかった戦争類似の国家的作用」

 とある。オウムは国家との対決姿勢を鮮明にし“戦争”を標榜したが、検察内部でも同じような実感があったのだろう。そして、以下の記述も驚きを禁じ得ない。

・警察庁の指揮による全都道府県警察と地方検察庁の3分の2が関与

・独立国家類似の共同体組織による軍事的犯罪集団性と全貌を把握・解明しきれない犯罪の山

・天文学的な逮捕・捜索令状(逮捕の実数456人、適用した罪名74)

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