「オウム抗議の座り込みをすると、警察はわれわれを排除した!」 上九一色村で教団と対峙した村民が振り返る 「地下鉄サリンは防げた」
「特捜刑事たちがここまで駆り出されるのは異例中の異例」
全国で456人もの逮捕者が出た凶悪事件など、後にも先にもオウムしかないであろう。検察の捜査態勢も当初の7人から、全国の高検から応援をもらい85人になったとある。オウム信者の場合、一筋縄ではいかないケースが多く、黙秘や否認を続けるやからも多かった。
「第二次オウム真理教関係者に対する一連の被疑事件捜査本部」と記された組織図を見ると、地検ナンバー2の次席検事が本部長となり、副本部長に刑事部長、取り調べの最前線となる「身柄班」に担当検事の名前が記されている。所属としては「刑事部」、「公安部」の他に「特捜部」の検事の名前も多く見られる。
「政界汚職事件などを手がけ、検察の“花形”ともいわれる特捜検事たちがここまで駆り出されるのは異例中の異例だ」
と、元検察幹部は振り返る。もちろん、特捜部だけでなく地検の刑事部、公安部もフル稼働していた。刑事部は主に殺人事件、公安部は銃器関係、特捜部は後に死刑となる重要な被疑者の取り調べを担当したという。
いまだ解明されていない謎が
確かに特捜検事が担当していた被疑者を見ると、新実智光、中川智正、井上嘉浩、遠藤誠一ら坂本弁護士一家殺害事件や松本・地下鉄両サリン事件に関わった重要幹部たちだ。特に新実は黙秘を続け取り調べは難航を極めたが、ある特捜検事が時間をかけて自白させ、調書を作成することができた。まさに前代未聞の組織的犯罪に、検察も全庁を挙げてオウムと対峙していたのだ。レジュメの行間には検察がオウムに翻弄されていた様子がにじんでいる。
「1か月間に発布を受けた捜索令状は5千通を超え押収した証拠物を保管する場所がなくなる」
「何度捜索しても次々に証拠物が出てくる不思議」
「血の滲む物(ブツ)読み作業開始」
レジュメの最後には「50人を超える信者の不審死を始め種々の事件事故について不明部分が多い」とある。一連のオウム事件では立件されただけでも29人もの犠牲者がいる。その他にも教団内で不審死を遂げたり、いつの間にか行方不明になったりした信者が数十人はいる、と私も脱会信者から聞いたことがある。オウム事件にはいまだ解明されていない謎があるのだ。
次ページ:「手柄話ではなくて、『こういう失敗があった』と言うべき」
[2/5ページ]

