2026年度末で「手形」と「小切手」が廃止の衝撃…680億円の巨額“絵画取引”のウラで手形と小切手が飛び交った「イトマン事件」を振り返る
手形・小切手廃止の衝撃
全国銀行協会は3月26日、手形や小切手の決済システム「電子交換所」の運用を2026年度末で終了すると発表した。
読売新聞は終了を報じた記事で《明治以来続いてきた制度に終止符が打たれる》と報じた(註2)。確かにその通りだ。金融史における大きな転換点と指摘しても大げさではないだろう。
手形も小切手も非常に長い歴史を持つ。日本では1882(明治15)年に太政官布告「為替手形約束手形条例」が制定・公布され、近代的な手形と小切手が商取引に使われることになった。まさに文明開化の一環だったのだ。
1932(昭和7)年に手形法が、翌33(昭和8)年に小切手法が整備され、現在の制度が確立した。担当記者が言う。
「手形も小切手も共に現金の代わりとして決済に使える有価証券です。2億円の土地を購入する際、1万円札をケースに詰めて不動産業者に渡すのは重くて大変ですし、盗難も不安です。しかも長い金融の歴史を見れば、電子決済の実現は“つい昨日のこと”です。三井銀行(現・三井住友銀行)が世界初のオンライン・バンキングを稼働させたのは1965(昭和40)年のことでした。明治、大正、昭和の人々が現金ではなく手形や小切手で決済を行っていたのは非常に合理的だったのです」
第2回【ピーク時の交換高は「4797兆円」…手形・小切手の廃止に専門家は「経営者の矜持が失われないか」「手形詐欺は犯人にも高度な知識が必要だった」】では、なぜ国や金融機関は手形や小切手の実質廃止を経済界に求めたのか、なぜ専門家は廃止に懸念を示すのか、について詳しくお伝えする──。
註1:100億円不渡り 巨額の“許氏資金”どこへ イトマン絵画疑惑急展開(読売新聞大阪版朝刊:1991年4月11日)
註2:手形・小切手は26年度末で全廃、電子交換所が終了へ…手形は「下請けいじめの温床」の指摘も(読売新聞オンライン:3月23日)
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