結局続く「唐揚げ」人気、残るのは本物だけ セブン&吉野家も参戦…“第二の定番”模索へ

  • ブックマーク

店長時代に数えきれないくらい「からあげクン」を揚げた

 唐揚げを語るうえで避けて通れないのが、ローソンの「からあげクン」の存在だが、こちらは一般的な唐揚げとは一線を画す独自のジャンルを確立したといえるかもしれない。一口サイズに均一にカットしたむね肉を二段階で揚げるなど独自の製法を採用し、来年発売40周年を迎える。2024年12月時点で、累計44億食も食べられているという。これまでコラボを含め390種類以上のフレーバーが発売されていて、いつ店頭に行っても、常に新しい味が用意されているように思う。

 筆者はかつてローソンで店長をしていたが、「からあげクン」は圧倒的な売れ筋で、何個揚げたかわからない。Uber Eatsをはじめとするクイックコマースにおいても、売上ベスト3はすべて「からあげクン」が占めていた時期もあったそうだ。今も昔も変わらぬ人気ぶりだ。

 ついでながら、日本における鶏肉の消費をコンビニが支えていることに言及しておきたい。たとえば、骨なし、ジューシー、片手で食べられるといった特徴を持つファミリーマートの「ファミチキ」は、同店の看板商品だし、ローソンの「Lチキ」やセブンの「ななチキ」も若者を中心に人気を集め、鶏肉を日常的に食べる習慣を後押ししている。

「醤油味でもも肉」はひと段落

 唐揚げの専門家は、今の人気ぶりをどう見ているのだろうか。

「唐揚げはおやつでもあり、おかずでもあり、つまみにもなる。外食・中食・内食のすべてに対応できる国民食だ」

 とは、日本唐揚協会の八木宏一郎専務理事である。

「醤油味のもも肉をめぐる開発競争はひと段落し、今は“第二の定番”を模索する動きが活発化しています。最近は、『むね肉』を使ったジューシーな唐揚げを、醤油味や塩味で開発する企業が増えています。また、骨付きや希少部位にチャレンジした新商品も増え、部位のバリエーションが広がってきました」

 実際、セブンでは「むね肉」を使った唐揚げも用意されているし、軟骨や手羽元といった部位を使った唐揚げも専門店で見られるようになってきた。味だけでなく、食感、希少性といった新たな価値軸が唐揚げには求められるようになっているのかもしれない。商品開発が極まり進化したことで、唐揚げは「何を選ぶか」が問われる時代へと進んでいる。

「唐揚げは日本食」

 そしてもうひとつ、八木専務の「唐揚げは日本の国民食」という指摘は唐揚げの「これから」を考えるうえで興味深い。たしかに世界では、フライドチキンなど「揚げてから味付けする」または「衣に味をつける」スタイルの揚げ鶏は一般的だが、日本の唐揚げはそれらと異なる。鶏肉をタレに漬け込んでしっかり味を染み込ませてから揚げるという、日本らしいひと手間が加えられているのが特徴だ。

 日本のたまごサンドがインバウンド客の間で人気を博したように、唐揚げが世界に“再発見”される日も遠くないだろう。日本式唐揚げを看板にした専門店の海外展開が進み、 “日本の国民食”が“世界の人気食”になるのは、案外近い未来かもしれない。

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
消費経済アナリスト、流通アナリスト、コンビニジャーナリスト。1967年静岡県浜松市生まれ。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務などの活動の傍ら、全国で講演活動を行っている(依頼はやらまいかマーケティングまで)。フジテレビ「FNN Live News α」レギュラーコメンテーター、TOKYO FM「馬渕・渡辺の#ビジトピ」パーソナリティ。近著『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』(フォレスト出版)。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。