コメ最高値更新のウラで財務省が密かに進める「農政改悪」 専門家が警鐘「もし不作が起きたら…」「海外からの輸入にも頼れない」
あまりにも無謀
では、不測の事態が起きて、食料が足りなくなったときはどうするのか。有事でなくてもいきなり米不足になる国である。それなりの対策は必要のはずだ。これに対して改正基本法や基本計画が示したのは〈安定的な輸入の確保〉である。
「自給率は目標を掲げたにもかかわらず、一度も目標値を達成できなかったどころか、低下を招きました。今後も達成は難しいから、それに代わる安定的な輸入が不可欠だという認識ですね。では、輸入で本当に安定的な食料の確保ができるのでしょうか」(田代氏)
食料が足りなくなれば外国から輸入すればいい、と言うのは簡単だが、果たしていつまで持続できるだろうか。
基本計画は〈安定的な輸入の確保が必要〉としながら、その一方でこんな記述もある。
〈我が国の相対的な経済的地位は低下し、必要な食料や生産資材の安定的な輸入に懸念が生じている〉
かつて国内総生産(GDP)が世界第2位だった日本は、中国、ドイツに抜かれて現在は4位に転落、1人当たりのGDPともなると、01年に世界5位だったのが23年は韓国を下回りOECD加盟国で22位である。日本は貧乏になったと認めているのだ。さらに、ここ数年の貿易収支の赤字が続き、22年は20兆円という過去最大の赤字だった。それなのに、食料の安定供給を海外からの輸入に頼るのは矛盾しているし、あまりにもリスクが高過ぎないだろうか。
世界各地で「買い負ける」日本
基本計画によれば、日本の農地は〈国内需要を賄うために必要な面積の1/3程度しかない〉そうで、輸入に頼るのも無理からぬこととはいえ、国内の食料生産を増やさず輸入を当てにするとはあまりにも無謀ではないか。長期の経済停滞とデフレの進行で、買いたくても日本の企業にとっては値段が高過ぎて買えない「買い負け」が、世界の各地で起こっているという。ながく海外でソバや大豆を買い付けてきた小島康弘氏は言う。
「昔は中国産ソバのほとんどを日本が買っていました。7~8年前から健康に良いとかで、値段が上がって買うのも難しくなりましたね。安心して使えるのはアメリカ産ですが、値段が高くて買えません。最近はカザフスタンで買い付けていますが、われわれが手をつけたら中国も買いに来るようになりました。いずれ値段は上がるでしょう」
大豆もそうだ。ブラジルは世界最大の大豆輸出国だが、大豆栽培を始めたのは、73年にアメリカが大豆の輸出を禁止したため、田中角栄首相(当時)が資金援助をしたからである。今では中国が大量に買い付けるようになり、日本は簡単に買えなくなったと、ある商社マンがこぼしたことがある。それだけ日本が貧しくなったということだ。日本が欲しいものを自由に買えたのは昔の話なのである。
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