「いつか離婚するから…」不倫前提で結婚生活スタート、それぞれに僕の子 真実を知った妻が語ったこと
【前後編の後編/前編を読む】友人の彼女を奪ったり「妻と寝て」と頼まれたり… 歪んだ恋愛の原点は少年時代に「母」を盗み見た昼下がり
井筒秀太さん(43歳・仮名=以下同)には、拭えない記憶がある。小学1年のある日、帰宅した彼が目にしたのは、寝室で祖父に抱きかかえられる母の姿だった。後に祖父の通夜で「結婚後、他の人を好きになったことは」と母に問うも、答えは返ってこなかった。今となってはどこまで現実だったのかわからない。その後、秀太さんは「非常識な恋愛」をしてきた。友人の彼女との関係、家庭教師先の妻との関係、「妻と寝てほしい」と頼まれる奇妙な関係――。これらの背景には、あの日見た光景の影響があったのかもしれない。
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【前編を読む】友人の彼女を奪ったり「妻と寝て」と頼まれたり… 歪んだ恋愛の原点は少年時代に「母」を盗み見た昼下がり
大学を留年し、翌年も就職はできず、秀太さんはフリーターのような生活をおくった。最初は昼間のアルバイトをしていたが、経験もあったためいつしか夜の生活に流れていった。ところが、とある店で働いているとき、彼は「一生に一度」の一目惚れをする。
「お客さんとして来ていた同世代の女性で、希里子という名前です。目が合ったとき電流が走るって本当だったんだと思った。美人ならいくらでもいるけど、僕の心に訴えかけてくるような目をしていた。あとから聞いたら、『あなたが私に訴えかけてきたのよ』ということでしたが」
立場も考えずにアプローチした。彼女はデートに応じてくれた。性的なことには長けていた彼が、希里子さんにだけは触れることができなかった。毎週デートを重ねて3ヶ月たち、彼女から誘われてようやく男女の関係になった。
「今思い出しても、あのときの希里子への気持ちは純粋でした。彼女に少しでも嫌な思いはさせたくない、彼女の笑顔を見られるなら何でもする。そう思っていた。彼女は、とある専門職についていました。その彼女に見合うように僕も昼間の仕事をしようと決めました」
結婚を申し込もうと思った矢先…
とはいえ、秀太さんはそのときすでに26歳。氷河期でもあり、新卒でさえ就職難なのだから、中途採用はさらにむずかしかった。そんなとき役に立ったのは、学生時代の人脈だった。
「ちょっと怪しい人脈ですが、僕が頼まれていたような性的なプレイを好む人たちの中には、けっこう社会的地位の高い人もいたんです。相談したら、『大手は無理だけど、僕の知っているところならどこでも紹介するよ』と言ってくれた社長がいました。それで、とある中堅企業に就職できたんです。そこの社長がまたいい人で。心から恩を感じたので一生懸命働いたら、なんだか喜ばれて……」
1年ほどたち、希里子さんに結婚を申し込もうと思っていたころ、秀太さんの父親が車で人身事故を起こした。保険には入っていたが、本人も大ケガをし、いろいろと物入りとなった。妹は大学院に進んでいたし、母も大病の治療中。いくらでもお金が必要だった。
「間が悪すぎました。悩んでいたら様子がおかしいと社長から声をかけられ、素直にすべて話しました。社長は『金なら貸すから、心配しないでがんばって働きなさい』と言ってくれた。そして『それとは別の話だけど、うちの娘とつきあってみないか』と。社長としては本当に、それとこれとは別だと思っていたんでしょう。でも話の流れとして、別とは考えづらい。つまり断れる感じではなかったんです。本当は『実は約束した人がいて』と言ってしまえばよかったのに、金は借りるけどお嬢さんとはつきあえませんと言えなかった」
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