「いつか離婚するから…」不倫前提で結婚生活スタート、それぞれに僕の子 真実を知った妻が語ったこと
家族と恋人
望まれて生まれてきた息子には、祖父母も両親もいる。大人たちに囲まれて大事に育てられていく。ところが希里子さんは、認知されない娘を抱え、母親の助けだけを頼りに子育てと仕事に必死だったようだ。
「もちろん、そのことはわかっていた。給料の他に社長である義父が、小遣いをくれていたので、それを希里子に渡していました。麻衣佳とはあっという間に『家族』になったけど、希里子はいつまでも僕の恋人だった。一緒に住んでいないから恋人でいられるのか、あるいは希里子と僕の組み合わせが、夫婦より恋人に近いのか、それはわからなかったけど。家ではほとんどレス状態でしたが、希里子とはいつでも抱き合いたかった」
娘を自宅に連れ帰り…
そんなとき希里子さんの母親が転んで骨折、入院して手術、さらにはリハビリと全治3ヶ月という診断だった。困ったわと苦笑する希里子さんに、「オレができることは何でもするよ」と秀太さんは力強く言った。
「そんなわけにはいかないでしょと希里子がため息をついた。実は今週末、出張があるんだけど断ろうと思ってと彼女が言うんです。それならオレが預かる。そう言ってしまいました。まさかそんなことができるわけないでしょうと言われて、ますます意地を張るかのように大丈夫だと請け負いました。学生時代の先輩が事情があって困ってるとか、いろいろ言い訳はできると思っていた。帰宅して話すと、『誰かめんどうみてくれる人はいないの?』と妻が言う。いないんだよ、だから気の毒で、2日間だけだからと説得しました」
週末、秀太さんは希里子さんの自宅へ車で行き、新幹線に乗る彼女を東京駅へと送った。そしてそのまま娘を連れ帰った。娘はもともと秀太さんを「パパ」とは思っていない。ときどき会う「ママの友だち」だと理解しているようだった。
「だから連れて帰れたんですけどね。麻衣佳は『よろしくお願いします』と頭を下げた娘がすっかり気に入ったみたいでした。娘は4歳、息子は3歳。僕の子がふたり揃っているのを見ると、なんだかせつないようなうれしいような、複雑な気持ちでした」
「この子の両親はどうしてるの?」
もしバレたら麻衣佳さんを傷つけるとは思わなかったのかと問うと、秀太さんは「そこまで考えていなかった」という。希里子さんを助けなければいけないと思い込み、妻の気持ちを考える余裕はなかった、と。だがそれは1回では終わらなかった。それから数年間、ときおり預かるようになったのだ。
「麻衣佳が『この子の両親はどうしてるの? どうしていつまでも預かるの?』と言うようになったけど、いろいろ事情があるんだよと言うしかなかった。麻衣佳はどんどん不信感が募っていったようです」
それはそうだろう。子どもを何度も預けているのに姿も見せず、お礼も言わない親なんているのかと尋ねる麻衣佳さんの感覚は一般的だ。そして当然のことだが、麻衣佳さんに詰め寄られた秀太さんは、つい「かつての女友だちの子どもで……」と言ってしまった。
「あなたの子じゃないのと言われて、違うと言い切れなかった。認知もしてないのだから違うと言えばよかったのに、そう言ったら娘に申し訳ない気がして」
妙なところで正直が徒となった。子どもの年齢が近かったことから、結婚後すぐに不倫をしたと麻衣佳さんは思ったようだ。秀太さんに言わせると「希里子が僕の第一の女性」ということになる。だが、さすがにそれは言えない。お金のために結婚したこともわかってしまうのだから。
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