「いつか離婚するから…」不倫前提で結婚生活スタート、それぞれに僕の子 真実を知った妻が語ったこと
いつか離婚するから、そのときまで待ってくれないか
希里子さんと別れることなど考えられなかった。だが、社長の話も断れない。悩んだあげく、秀太さんは希里子さんに話した。いつか離婚するから、そのときまで待ってくれないか、と。
「希里子は『あなたもつらい立場ね』って。『わかった。いいわよ』と言うんです。私たちは離れられない。だからあなたが結婚しても、今のままの関係でいてよねって。僕も納得して、社長のお嬢さんである麻衣佳と結婚したんです」
彼が27歳、麻衣佳さんは24歳だった。その状態で結婚に踏み切ったのは、やはり実家の家族を助けたかったから。だが希里子さんとすんなり結婚できなかったことで、かえってふたりの中が深く濃くなることまで彼は予測していたのかもしれない。
「気持ちがいろいろ倒錯していました。いちばん好きな希里子と結婚せず、麻衣佳としたことで確かに希里子との関係は共犯的な確かさを感じた。麻衣佳とは、つきあいらしいつきあいはなく、2回ほどふたりで食事をしただけで一緒になってしまったけど、穏やかで優しい女性だということはよくわかった」
「半年会わないでおこう」の意味は…
結婚式前夜も彼は希里子さんと会っていた。だが彼女は「半年くらいは会わないほうがいいと思う」と言い出した。今は家庭を安定させるのが優先事項でしょと希里子さんは微笑んだ。
「半年たって連絡すると、あと数ヶ月たってからと言われて。そうなると僕の希里子への気持ちはどんどん濃くなっていく。さらに半年たって、ようやく会うことができたんですが、彼女は子どもを産んでいました。これにはひっくり返るほど驚いた。もちろん僕の子です。とんでもなくかわいい女の子だった」
彼が結婚するときすでに彼女は妊娠していたのだ。だがそれを伝えなかった。そんな彼女の気持ちを考えると、秀太さんは泣けてしかたがなかったという。どうして結婚を断らなかったのかと後悔した。もちろん、そのために社長は大金をはたいてくれた。娘と結婚してくれたことを感謝している、これは借金と考えなくていいと言ってくれた。将来の社長の地位も約束されていたわけだ。
「父もその後、回復して母も寛解、妹も就職して3年後にはすっかり事情が変わっていた。麻衣佳との間には男の子が生まれました」
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