「怪しい健康食品」はどうすれば見抜ける? トクホ、機能性表示食品はどちらを選ぶ? 専門家が徹底解説

ドクター新潮 ライフ

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世界に冠たる安全な制度

 そしてこの問題を受け、遅きに失したとはいえ、政府は昨年8月30日付で「内閣府告示第百八号」を出し、機能性表示食品の錠剤、カプセル剤にもGMPを義務化、トクホも同様に進められています。事業者には実施までに2年の猶予が与えられていますが、このGMP義務化によって、小林製薬問題のような事故が起きることは、今後防げるようになるでしょう。さらに今年の4月1日からは、機能性表示食品の届出システムも厳格化されました。つまり、トクホと機能性表示食品においては、世界に冠たる安全な制度が確立されたのです。

 翻って、「怪しい健康食品」はGMPの埒(らち)外です。事業者の中には、「GMPなどなくても、うちは徹底した製造管理を行っているから大丈夫」と胸を張るところもあるでしょう。大いに結構なことだと思いますが、GMPが課されていない以上、安全性の管理に関する不安は完全には払拭されません。これが、「怪しい健康食品」は避けたほうが無難であると私が考える理由の一つです。

「効いているような感じがする」でオッケー

 それでは、ここまでの話を踏まえた上で、私たちは具体的にどんな健康食品を摂取すればよいのでしょうか。

 現在、健康食品市場は9000億円超に達し、あまたの商品で、あらゆる機能性がうたわれています。血圧、血糖、体脂肪、膝関節機能、肌の健康、目の調子、お腹の調子など多くの人が気になる悩みを改善する商品がたくさん販売されており、トクホや機能性表示食品はその科学的根拠の裏付けがあります。

 結論から申し上げます。「怪しい健康食品」はおいて、興味をそそられるのであればどんなトクホや機能性表示食品でも摂取すればいいと思います。ただし、留意事項があります。冒頭で触れた通り、健康食品だけで健康になるという前提に立たないということです。繰り返しになりますが、消費者庁が言うように健康の基本は〈食事のバランス〉だからです。

 私の薬学者仲間で、こんなことを言っている人がいました。

「ちょっと寝つきが悪かったから、テアニンが入った機能性表示食品を取るようにしたんだけど、気のせいか効いているような感じがする」

 これでいいのだと思います。健康食品のおかげで寝つきが良くなったかどうかは結局のところ判然としません。もしかしたら、食生活や生活習慣を変えたために寝つきが良くなったのかもしれない。健康食品を摂取したのだから健康になるはずだという、プラセボ(偽薬)効果の可能性もあるわけですが、仮にそうだとしても、それで状況が改善されたのであれば万々歳ではないでしょうか。

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