「怪しい健康食品」はどうすれば見抜ける? トクホ、機能性表示食品はどちらを選ぶ? 専門家が徹底解説

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医療人が健康食品を軽視することによる問題も

 私自身も、ルテインが入った、ある機能性表示食品を取っていて、眼科に行くと年齢のわりには目の状態が良いと言われます。その機能性表示食品のおかげかどうか分かりませんが、結果として目の健康を保てているのですから満足しています。このように「お賽銭」を投げることが無駄だとは、私は思いません。

 もちろん、いくら「お賽銭」程度のものとはいえ、むしろ、だからこそ健康食品の摂取には課題も存在します。医師、薬剤師などの医療人が健康食品をすべて「怪しい健康食品」のように考えて、軽視する傾向にある点です。医薬品じゃないのだから、大した効果があるわけはないし、摂取しても無駄である、と。

 先ほど申し上げたように、健康食品は9000億円超の市場になっていて、多くの人が摂取している現実が存在します。また、テレビのコマーシャルで奇麗なタレントさんが「この健康食品を取ったら肌につやが出た」などと宣伝しているのを見れば、「私もやってみようかしら」と感じる消費者心理はむげにできません。

 にもかかわらず、医療サイドに健康食品を軽視する風潮があると、患者は健康食品を摂取していても医者には言いにくいと感じ、摂取していることを隠してしまいがちです。

薬との“併用”の問題

 すると、健康食品を摂取していない前提で薬が処方されてしまい、健康食品とその薬の“併用”が新たな問題を生むのです。実際、健康食品との関連が疑われる健康被害者の約6割は基礎疾患があるという現実の中で、“併用”には特に注意が必要です。ですから、患者が素直に健康食品の摂取を医者に報告できる社会になることが望ましいでしょう。そして、医療人も報告を受けたら対応ができるように健康食品の現状を学ばねばなりません。

 現在、トクホと機能性表示食品の登録商品数は約1万にも達しています。錠剤、カプセル型から一般食品までを包括的に食生活に役立てることができる日本の健康食品制度は素晴らしいものです。健康食品を薬のようにではなく、食生活習慣を変える手段とするならば、日本は「健康を願う」機会に恵まれた国なのです。

長村洋一
薬剤師・薬学博士。岐阜薬科大学大学院博士課程修了。一般社団法人日本食品安全協会代表理事。藤田医科大学名誉教授・鈴鹿医療科学大学客員教授(前副学長)。食品の安全に関する啓発活動を続け、20年ほど前から大学での教育・研究の傍ら医療職者を教育対象とした協会を立ち上げる。『健康食品で死んではいけない』などの著書がある。

週刊新潮 2025年4月17日号掲載

特別読物「国の制度下にない商品が一番厄介…『健康食品』を正しく摂る方法」より

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