「怪しい健康食品」はどうすれば見抜ける? トクホ、機能性表示食品はどちらを選ぶ? 専門家が徹底解説

ドクター新潮 ライフ

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機能性表示食品の裏付けは?

 つまり、「怪しい健康食品」は、事業者が効果らしきものをうたっているに過ぎず、有効性の根拠や製造過程がどう管理されているか分からないのです。もちろんほとんどの商品は安全に配慮して製造されているでしょうが、先に紹介したような、医薬品などが混入されているリスクが拭い去れない。実際、これまでに健康被害や経済被害をもたらした商品のほとんどが「怪しい健康食品」です。

 なお、トクホは販売されている製品自体で臨床試験が行われ、その効果を国が確認しています。一方の機能性表示食品は、トクホと同じような臨床試験を行っている商品もありますが、多くは含まれている成分の機能性に関する過去の論文を、事業者の責任において調査し、国に届け出ることで販売できる。こうした違いがあり、大雑把に捉えるならば、機能性の裏付けの強さは、トクホのほうが勝っているといえるでしょう。

GMPの義務化

 トクホと機能性表示食品は安全性が担保されていると言われても、問題を引き起こした小林製薬のサプリは機能性表示食品だったではないか、と思われる方もいるかもしれません。実は、小林製薬問題を受け機能性表示食品は「生まれ変わった」のです。

 機能性表示食品制度が始まったのは2015年で、当初から私は錠剤、カプセル型の健康食品にGMP(適正製造規範)による製造が義務付けられないことを大きな問題として指摘していました。

 GMPとは、ごく簡単に言うと、2重、3重のチェック過程を設け、製造段階におけるミスを徹底的に排除し、品質を厳密に確保するシステムです。これによって、製造過程でのミスはほぼ完全に防げるのですが、機能性表示食品には義務付けられませんでした。

 しかし、かねて健康食品の世界では「原料を入れ間違えた」「ラベルを貼り間違えた」「ゴミが混入していた」といったようなミスが、散見されていました。危機管理において「ハインリッヒの法則」と呼ばれるものが存在します。1件の重大な事故が発生する裏では29件の軽微な事故、そして300件の「ヒヤリ・ハット」(事故には至らなかったもののヒヤリとしたりハッとしたりする事例)が起きているという法則です。これに従えば、機能性表示食品でもいずれ重大な事故が起きてしまうからGMPを義務化すべきだと、私は再三警鐘を鳴らしていたのですが、残念ながら、案の定、死者まで出る小林製薬問題が起きてしまったのです。

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