「実はオートロック付きマンションが狙われる」 トクリュウ強盗の意外なウラ側 元留置場看守が“犯罪者目線”で解説

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 就職や進学、転勤などで新生活がスタートする時期は空き巣や窃盗の被害が増えるという。春の陽気や気忙しさで緩む防犯意識の隙を突かれるからだ。元大阪府警の警察官で全国防犯啓蒙推進機構の折元洋巳理事長が、目からウロコの最新防犯対策を指南する。

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 私は警察官として20年間にわたって奉職した。その間、1000人を超える犯罪者と接したが、その大半は留置場での勤務中に出会った連中だ。

 うすら寒く殺風景な留置場に身を置いていると人恋しくなるのか、彼らは意外なほどたやすくホンネを口にする。「刑事たちには内緒ですよ。おやっさんにだけ、言いますわ」という具合。普段は決して口にしない、犯罪者の手口や自身の心理を打ち明けるのだ。

 彼らとのやりとりで見えてきたのは、世間で「常識」とされている防犯対策の多くが、実際にはさほど意味を持たず、時には犯罪者を利しているという現実だった。

オートロックのマンションがターゲットになる理由

 いまや全国で頻発する「トクリュウ」と呼ばれる、匿名・流動型犯罪グループによる強盗事件や空き巣の被害についても同様で、残念なことに広く社会に定着している対策の中には致命的な誤りも少なくない。

 一例を挙げよう。ほとんどのマンションのエントランスに設置されているオートロックである。住民の出入りの際、自動的に施錠される安心感が最大のウリで、新社会人や初めて一人暮らしを始めるお子さんをお持ちの親御さんの多くが、物件探しの際に「オートロック付き」を必須条件に挙げる。

 入口のドアが自動で閉まる点は、安全に思えるのだろう。が、私が出会った窃盗犯たちは、このオートロック付きのマンションを“仕事”における格好のターゲットとしていたのだ。

 なぜか――。理由は明らかで、メーカーが防犯の素人だからだ。導入が始まった当初、オートロックシステムは外出時に内側からロックを解除するためにサムターンを回したり、ボタンを押したりする必要があった。当時は高い防犯性が担保されていたのである。

 ところが、その後に各メーカーが利便性を優先して新製品を開発し続けた結果、“内側からは人間の動きを感知して自動開扉するシステム”が主流になってしまった。これは窃盗犯にとっては願ってもない仕様の変更だった。

 外国人窃盗団が狙う物件の大半はオートロック付きのマンションであることが分かっている。意外に思うかもしれないこの現実は、多くの国民が持つ防犯意識が厳しい現実とリンクしていないことを端的に示唆している。

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