“妹”と暮らし“姉”に惹かれ…「血の繋がらない姉妹」の間で揺れた41歳男性の10年間
【前後編の後編/前編を読む】僕を“おにいちゃん”と呼ぶ9歳年下のカノジョ…「そのうち捨てられるのでは」 アラフォー男性が抱き始めた束縛願望
大久保晶一さん(41歳・仮名=以下同)は、9歳年下の恋人・愛美さんと同棲中。だが遅れて大学生と彼女に対し「いつか自分は捨てられるかも」と不安を抱いている。そんな愛美さんには、血の繋がらない姉がいる。両親はそれぞれ既婚者の身でありながら関係を深めて不倫関係となり再婚した経緯があり、父の元妻は連れ子のいる女性だった。夫の不倫に絶望したその女性は娘を置いて去ってゆき、それが愛美さんの姉――というのが、かつて親類から聞かされた説明だった。
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【前編を読む】僕を“おにいちゃん”と呼ぶ9歳年下のカノジョ…「そのうち捨てられるのでは」 アラフォー男性が抱き始めた束縛願望
一緒に住み始めて2年ほどたった週末、突然、訪ねてきた人がいた。玄関で愛実さんが大きな声を出しているので行ってみると、彼女の姉である紀美子さんが立っていた。晶一さんが会うのは初めてだ。
「『突然、連絡もせずにごめんなさい。これから出張なんだけど、ちょっと時間があったから寄ってみたんです』と。上がってもらって30分くらいですかね、話ができたのは。医療関係の営業職で、出張ばかりだと言っていました。一言でいうと知的な女性。話も上手で、出張先での失敗エピソードを軽く話して、これからも妹をよろしくお願いしますと去っていきました。彼女が去ったあとは、なんだかふわっとした空気が残っている。そんな素敵な女性でしたね」
紀美子さんは愛実さんより6歳年上だった。3歳で父親に引き取られ、その後、両親は3年間、紀美子さんを溺愛した。それから愛実さんが生まれたのだ。
「紀美ちゃんが帰ったあと、愛実は放心状態みたいに見えました。愛実自身も久しぶりに会ったから疲れたのかなと思ったけど、なんとなく様子が変だった。たぶん、愛実は自分の環境が変わってからも、やはり姉に対しては複雑な感情を抱いていたんでしょうね。『愛実ちゃんもよかったね、こんな素敵な人と一緒にいられて』と紀美ちゃんが言ったとき、愛実は『うん、私たち家族だから』と胸を張ったんですよ。普通なら……まあ、なにが普通かわからないけど、愛実の年なら『自分の彼』とか『恋人』とかいうところをアピールするんじゃないかとちょっと不思議でした。愛実はやたらと『家族』を強調していたので」
「家族」強調の裏にある感情は
だがその後、晶一さんはふっと思った。紀美子さんには血のつながった家族がいない。実の父は亡く、母とも縁が切れたままだと愛実さんは言っていた。養父母である愛実さんの両親は惜しみなく愛情を注いだが、愛実さんからみれば、「私は両親とは本当の家族だけど、おねえちゃんはあくまでも養子」という思いがあったのではないかと。そしてそれは、愛実さんの意地の悪さではなく、実子なのに親に養子より愛されていると思えない自信のなさなのではないか、と。だからあえて家族を強調したのではないだろうか。
「養子だ実子だということにこだわる必要はないと思うけど、愛実はそう考えてしまったんでしょう。思った以上に愛実の中で『家族』というものが重いんだとわかりました。だから彼女は僕を『家族』と位置づける。姉に対する気持ちは複雑なまま固まってしまっているのかもしれない」
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