“妹”と暮らし“姉”に惹かれ…「血の繋がらない姉妹」の間で揺れた41歳男性の10年間

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「紀美ちゃん」に連絡

 どうしても気になったので、愛実さんの携帯電話から紀美子さんの番号を調べた。後ろめたさはあったが、愛実さんのことを深く知るためにやむを得ないと自分に言い聞かせ、紀美子さんに連絡をとった。

「そのときは本当に純粋に、愛実をもっと知るために紀美ちゃんに会わなければと思ったんです。今思えば、紀美ちゃんに惹かれていたのかもしれないけど……」

 愛実さんには黙って、紀美子さんに指定された店に出かけた。路地の奥の小料理屋だった。フリで入れる店ではない。3歳年下の紀美子さんの社会人としての深さのようなものを晶一さんは感じたという。

「紀美ちゃんは、本当にフレンドリーでした。愛実のことがなくても友だちになりたいと誰もが思うような素敵な人だった。だから僕も隠し立てせず、愛実の心理状態がわからないと相談したんです」

 紀美子さんは、「どういうふうに聞いている?」と尋ねてきた。晶一さんが愛実さんから聞いたところを話すと、「それが本当かどうかちょっとわからないのよね」とつぶやいた。

 愛実さんの父親が、紀美子さんの母親と結婚したのは事実だし、愛実さんの母と不倫関係になってそれぞれ別れて再婚したのも事実。ただ、紀美子さんの母親は彼女を置いて男と失踪したわけではないのだという。

「実は私、大きくなってから実の母親を探し出したんです。愛実の父である私の養父が、母の連絡先をもっているのを見つけてしまって。20歳になったころだったかな。実母に会ったら、『私は再婚した夫に捨てられ、あげくあなたを奪われたのよ』って。離婚したらひとりで生きていけないだろう、娘もきっと邪魔になる。だからオレたちが育てるって養父が言ったと。あの養父がそんなことを言う人には思えないけどと私が言ったら、あの男は私の前に札束を置いたって」

 紀美子さんはそう言って涙声になったという。つまり私は売られたんですよと泣き笑いのような表情を浮かべた。売るほうも売るほうだけど買うほうも買うほう。養父にそんな財産があったとも思えなかったけど、たまたま親の遺産が入ったんだと。

「それにしても不倫の恋に落ちて、これからふたりで一緒になるのにわざわざ他人の子を引き取るというのがどうしても理解できなかったと紀美ちゃんは言っていた。実母は、それは罪滅ぼしみたいな感情でしょうと言っていたと」

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