「目黒区内のJR目黒駅」「対処療法」「深堀りする」と誤記してしまう“共通の理由”…プロの校閲者も警戒する“危険な落とし穴”とは
こんにちは。新潮社校閲部の甲谷です。
さて、第1回に続いて突然ですが、問題です。
この原稿を書いている2025年3月17日現在、政治の世界では石破総理が1年生議員に配った「商品券問題」で揺れています。それに関連した次の文章をファクトチェック(事実確認)してみてください。
ファクトチェックも校閲業・出版業の大事な一要素です。今回はスマートフォンやパソコンで調べられる内容です。
制限時間は3分とします。前回同様、可能な方はこの記事をプリントアウトして解いてみてください。修正案やその理由は鉛筆で書きます(なお、原稿を執筆したのが3月17日であるため、それに準じた表現になっています。その点はご指摘不要です)。
では、どうぞ!
答えと解説は、本文の最後にあります。
JR目黒駅は何区にある?
さて、上の問題に関連することでもありますが、校閲の仕事において「思い込み」は非常に危険です。というのも、世の中「そりゃそうだろ」と思って(思い込んで)いたら、「実はそうではない」という例がたくさんあるからです。
例えば、JR品川駅は品川区ではなく港区にあり、JR目黒駅は目黒区ではなく品川区が所在地です。ややこしい……。また、埼玉県の志木駅(東武東上線)は志木市ではなく新座市にあります。
こうした例は日本中に見られるので、「埼玉県志木市にある志木駅の周辺には~」という文章を読みながら(そりゃ、志木駅は志木市にあるでしょ!)と“華麗にスルー”しないように気をつけねばなりません。
人名にも注意が必要です。かく言う私も最近、原稿で岩屋毅外務大臣の名字が「岩谷」になっているのを通してしまい、他の校閲者の方に拾っていただいたことがありました。甲谷の谷なのに……!(もしや、甲谷の谷だから、か?)
私は以前から、人名の誤植には「真ん中の法則」があると考えています。たとえば「真里奈」と「真理奈」のような違いは、長編小説などで目が滑りやすい、すなわち漢字3文字の人名では真ん中に注意、と肝に銘じていたのでした。それなのに……。雑誌の校了中で時間がなかった、というのは言い訳にもなりません。
[1/2ページ]



