「ラーメンは宇宙」「店では黙って丼に集中」 世界的ピアニスト「上原ひろみ」が語り尽くしたラーメンと音楽の意外な共通点とは
グラミー賞受賞(2011年)など世界的な人気を誇るジャズ・ピアニスト、上原ひろみがバンド編成の新プロジェクトによる新作を発表した。日本人は彼女のみという新作には「ラーメン」をテーマとした1曲が。新作に関するインタビューで、そのラーメン愛について聞いたところ、驚くほどの情熱で語ってくれた。【ライター/神舘和典】
(全2回の第1回)
メンバーの個性を最大限発揮できる曲を
2003年に米ボストンにある名門バークリー音楽大学在学中に米メジャーデビュー。2011年に「スタンリー・クラーク・バンド フィーチャリング 上原ひろみ」で第53回グラミー賞「ベスト・コンテンポラリー・ジャズ・アルバム」受賞。世界をステージに活動を続けるピアニスト、上原ひろみが4月4日、新作をリリースした。アルバム・タイトルは「OUT THERE」。キーボード、ドラムス、ベース、トランペットの4人編成で、バンド名はHiromi’s Sonicwonderと名付けた。
「2023年にリリースしたバンドの1作目『Sonicwonderland』では、まずやりたい音楽があって、頭の中で鳴っているそのサウンドを体現してくれるミュージシャンを集めて演奏してもらいました。想像していた以上のサウンドになりました」
と、上原本人が語る。2作目は1作目とは逆の行程でつくったという。
「今回の『OUT THERE』は、私を含めたバンド4人の音ありきで、曲をアテ書きしています」
つまり、個々のメンバーの個性を最大限発揮できる曲をつくったというわけだ。
「それぞれがそれぞれの演奏を輝かせるアルバムになるようにと作曲し、アレンジし、演奏しました。たとえば管楽器であるトランペットは、1音ずつ音を発する単音楽器です。でも、ソニックワンダーのメンバー、アダム・オファリルはエフェクター(音響効果装置)を巧みに使って音を変化させて、ほかの楽器の伴奏の役割もできます。自分の演奏だけでなく、ほかのメンバーを引き立たせられる。そういう持ち味を生かした作品になりました」
「Yes! Ramen!!」の秘密
彼女自身はアコースティック・ピアノとシンセサイザーを演奏。歌モノ、組曲、ソロピアノなど、「OUT THERE」は4人編成でありながら、多彩な作品にあふれている。スロー・ナンバー「ペンデュラム」についてはピアノの音色を堪能できるインストゥルメンタルと、女性ヴォーカルが参加したバージョンを収録した。
「OUT THERE」のなかで、ファンの間でとくに注目されている1曲が「Yes! Ramen!!」。シンセを効果的に使ったファンキーなナンバーだ。2024年暮れのジャパン・ツアーでも演奏し、客席は大いにわいた。テーマはタイトルのとおり、ラーメン。
この曲について質問すると、“自称・ラーメン・アンバサダー”の彼女はラーメンへの思いを熱く語り始めた。
そもそも、そのラーメン愛についてファンの間では広く知られている。それはいつからなのだろうか?
「言葉を発したころからです」
即答だった。
幼かった彼女は「この食べ物はいったいなに!?」とびっくりしたそう。
「私の子ども時代の外食は、街中華かファミレスの二択でした。パスタも好きですけれど、頻繁に食べるようになったのはハイティーンになってから。それまではラーメンがご馳走。とくにうちの食卓は和食が多かったので、ラーメンの日は特別でした。私は醤油ラーメン派でした。ただただ好き」
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