「中指の第一間接」に隠れた誤字とは? 日本語のプロ「校閲者」が“誤植”を見逃してしまった意外な理由

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「デイリー新潮」の記事をはじめ、小説やエッセイ、漫画や写真集と、あらゆる出版物の誤字・脱字や事実関係の誤りを指摘する、「校閲」の仕事は“縁の下の力持ち”であると同時に“研ぎ澄まされた職人集団”とも言えます。新潮社の現役校閲部員である甲谷允人さんが、日々の業務を通じて感じた文章表現や日本語の面白さ、奥深さなどを綴る新連載の始まりです。

似た形の漢字に注意

 はじめまして。新潮社校閲部の甲谷(こうや)と申します。

 さて、突然ですがここでクイズです。

 今月末からゴールデンウィークですが、その最中の5月3日は憲法記念日ですね。そこで、日本国憲法25条1項の条文を記します。この中に、明らかな間違いが10カ所あります。これを校閲してみてください。

 表記は政府の「e-Gov法令検索」ホームページに従いました。先に、ホームページで実際の文面を確認した後に挑戦していただいてもOKです。

 なお、「すべて」は「すべての」でなく、そのままで大丈夫です。

 もし可能なら、プリントアウトして挑戦してみてください。間違っている文字に赤丸をつけ、線を引いてその先に正しい文字を書きます。不要な文字などがあった場合は、「トル」と書きます。

 制限時間は1分です。では、どうぞ!

 答えは上記のリンクをご参照ください。

 このクイズからもお分かりいただけたと思いますが、日本語、特に漢字には似た形のものが非常に多く、油断していると重大な誤記(誤植)につながることがあります。私は「校閲」という、誤字脱字を指摘する(ことが業務の一部である)仕事に就いていますので、こうした「似た形」の漢字の実例を、今まで枚挙にいとまがないほど目にしてきました。

 似た形の漢字の一例として、人名の「崇」(たかし、などと読む)と「祟」(たたり)、というものがあります。

 一見、ほとんど同じ字のように見えますが、実はかんむり(帽子の部分)が「山」と「出」です。甲谷祟(こうやたたり)さん、ではなんだか今にも呪われそうで怖いですね。実はこの誤記、私は最近の原稿でも目撃しています。他に似ている漢字の例としては「かき」と「こけら」というのがありますので、是非調べてみてください。

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