「つらい五十肩は自分で治せる」 専門家が指南 「整形外科でやってはいけないコト」とは
モヤモヤ血管
関節炎との関係を知るきっかけになったのは、大学院にいた当時、乳がんにかかった40代の女性患者さんが「痛くて腕が上がらない」「顔も洗えないし、夜も痛くて眠れない」と訴えてきたことでした。レントゲン写真を撮ったところ、肩に異常な血管ができていることが分かりました。細かい血管が縦横に広がっており、モヤモヤッとかすみがかかったような形状です。後に研究発表の際、内科の先生から「モヤモヤッとしている血管が悪さしているんだね」と言われたので、私自身もモヤモヤ血管と呼ぶようになったのですが、それが関節の周りなどに、薄く広がっていました。
私はこのことを患者さんに説明して、血液の流れを遮断すれば炎症が改善するかもしれないと伝えました。そして、カテーテルを使って細かい粒子で出来た薬を少量注入したのです。すると、すぐに患者さんが「すごく楽になった」と言うではありませんか。さらには翌日から夜間痛が無くなったとも。これがきっかけで、五十肩など関節痛の大きな原因が、モヤモヤ血管ではないかと考えるようになったわけです。
血管と神経
では、モヤモヤ血管ができるとなぜ痛いのでしょうか。モヤモヤ血管は、炎症を起こしているところによくできるのですが、それを追いかけるように神経が張り巡らされます。
人間の体は血管が新しく作られると、それに沿って神経線維ができてゆく。医学的には「血管と神経のワイヤリング」と呼ばれています。また、モヤモヤ血管は、正常な血管より何倍も膨れ上がっているのが特徴で、そうなると、血液が流れるだけで隣の神経が反応してしまう。ズキッとする痛みはここから来ているのではないだろうか。
だとすれば、このモヤモヤ血管を消すことで、神経に障ることも無くなるはずです。
先にも説明したように、カテーテルを使った血管の治療には良い薬があります。がん細胞の周囲にできた異常な血管を標的にしたもので、ごく短い時間だけ詰まらせることができる。副作用はありません。
この薬をモヤモヤ血管まで届ければ、もともと脆いモヤモヤ血管は詰まり、簡単には再生しません。私は12年から都内の総合病院に移り、このカテーテルによる関節炎の治療法を確立させると、17年にクリニックを開業。現在に至っています。
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