「足を使って取材しろ」「当事者でもない奴が記事を書くな」「偏向報道だ」…“フリー記者”はSNS上の“批判”をどう受け止めているのか

  • ブックマーク

本当の「偏向報道」とは

 とはいえ、メディアに世間の指す“偏向報道”がないのかといったら、そんなことはない。メディアが起こす悪質な偏向報道というのは、個人的に「取材内容の操作」に表れると思っている。

 なかでも散見されるのが「グラフや数字」におけるビジュアル面での操作だ。

 例えば、アンケート調査結果で、20%の割合を円グラフで40%ほどとして大きく見せかけたり、軸の目盛りの間隔を歪めたりする印象操作が過去には度々起きている。こうした恣意的な操作は、メディア側の完全なる「偏向報道」と言えるだろう。

 また、例えば「満足」「普通」「不満」を聞いたアンケート調査の結果において、「普通」の数字を含めて「普通以上」「不満」と選択を2つに分けるようなグラフも見かける。

 統計学には「数字はウソをつかないが、ウソをつく人は数字を使う」という有名な言葉がある。数字は客観的にその出来事を捉えることができる最大の指標である。だからこそ人は騙されやすいということも知っておくといい。

 最後に、メディアの情報操作として個人的に悪質だと思うことを紹介しておこう。

 それは、「チェリーピッキング」だ。

 これは、例えば30人に取材したうち、取材側が潜在的に望んでいた回答をした、たった1人の話を取り上げて「世間の声」として紹介する手法を指す。決められたページ数で記事を書く、時間内に放送する、というように、メディアには制限が生じるため、どうしても報じる側には「想定」が生まれる。

 その「想定」が「予定」に近づけば近づくほど、このチェリーピッキングは生じやすい。
受け手の多様化や送り手の人手不足により、番組・記事制作は年々難しさを増すが、結果ありきの取材方法はメディアとしては絶対にあってはならない。

 恣意的でないにしても人間が報じている以上、報道機関も時に誤情報を流してしまうことはある。もちろんその数をできるだけ少なくするよう各メディアは努力しているところだが、情報が溢れる昨今、情報の送り手だけでなく受け手もネットリテラシーを高める必要があるとつくづく思う。

橋本愛喜(はしもと・あいき)
フリーライター。元工場経営者、日本語教師。大型自動車一種免許を取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場を訪問。ブルーカラーの労働問題、災害対策、文化差異、ジェンダー、差別などに関する社会問題を中心に執筆中。各メディア出演や全国での講演活動も行う。著書に『トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書)、『やさぐれトラックドライバーの一本道迷路 現場知らずのルールに振り回され今日も荷物を運びます』(KADOKAWA)

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 4 次へ

[4/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。