「足を使って取材しろ」「当事者でもない奴が記事を書くな」「偏向報道だ」…“フリー記者”はSNS上の“批判”をどう受け止めているのか

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「メディアスクラム」

 もう1つ、世間からは大きな事故や事件が起きた時、メディアが一斉にその当事者へ取材に行く「メディアスクラム」にも批判が向く。

 確かにメディアによる過熱取材はよくない。どこよりも早く情報を得たいという思いから周りが見えなくなり、世間はおろか、当事者にも迷惑をかけるケースも少なくない。

 筆者自身、このメディアスクラムにはかなり敏感で、長いこと被害者遺族に取材依頼ができなかった時期がある。

 とりわけトラックドライバーの事情について書くことが多い手前、トラック事故による被害者遺族への取材においては被害者遺族へどうアプローチしていいものかとかなり悩んでいたのだが、いざ被害者遺族に触れてみると「是非報じてください」と積極的に取材に応じてくれる人が多い。

 被害者や被害者遺族においては、テレビの報道を見ていると「悲しい印象のある人」に映ることもあるかもしれないが、触れ合ってみると、我々と同じように日常生活を送り、笑い、仕事をしている人たちだという「当然のこと」に気付かされる。

 事故や事件においては、発生状況も当事者感情も十人十色だ。世間からは「大変な時にマイクを向けるとは何事だ」「そっとしておいてやれないのか」と通り一遍に批判されてしまいがちだが、なかには「聞いてほしい」「今の思いを世間に伝えたい」と思っている人たちもいることを知っておいてもらってもいいと思う。

都合のいい「偏向報道」

 メディア批判のなかで特にここ最近よく耳にするようになったのは、「偏向報道」という言葉だろう。

 偏向報道とは、意見が分かれるような状況において、都合よく情報操作が行われることを指す。

 特に選挙イヤーであった2024年はこの偏向報道という言葉が、メディアの報道姿勢を問う声として多く聞かれた。しかし、前回の記事でも言及したとおり、大前提として情報の受け手が知っておかなければならないのは、全てのメディアは偏向なくして報道はできないと言っても過言ではないこと。

 元々メディアは、限られた紙面や尺のなかでどんな事件や事故を取り上げるかを選択している時点ですでに偏向しているからだ。

 SNSで読み手が「偏向報道だ」と批判している要因を探ってみると、その多くは、自分の思想や主張と真逆のことを報じているメディアへの批判であることがほとんどなのである。

 現に、自分の都合のいい報道に対して「偏向報道だ」と言っている視聴者や読者を、筆者は今まで一度も見たことがない。

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