研ナオコ、令和でも大人気の中島みゆき提供曲「あばよ」のヒットを語る 事務所社長には「レコード大賞はいらないと即答しました」

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記録と記憶で読み解く 未来へつなぐ平成・昭和ポップス 研ナオコ(1)

 今回から、新連載「記録と記憶で読み解く 未来へつなぐ平成・昭和ポップス」がスタート! 本連載では、昭和から平成初期にかけて、たくさんの名曲を生み出したアーティスト(もしくは関係者)にインタビューを敢行。令和の今、Spotifyなどの音楽ストリーミングサービス(サブスク)で人気の楽曲をランキング化し、各曲にまつわるエピソードを深掘りすることで、より幅広いリスナーにアーティストの魅力を伝えていこうという企画である。

※主婦と生活社のWebメディア「fumufumu news」の休止に伴い、同サイトで連載していた「“記録と記憶のヒット”から読み解く 未来へつなぐ昭和ポップス」を、装い新たに移籍しました。

 記念すべき第1弾は、歌手デビューから50年が過ぎ、本業のみならず、バラエティー番組への出演や梅沢富美男との舞台共演、さらに近年は“すっぴん”を見せたメイク動画がバズるなど、多方面で活躍中の研ナオコ。Spotifyでは常時、月間10万人前後のリスナーがいるが(このうち海外からのアクセスも1割弱)、研ナオコ自身も、新たな音楽をチェックする際にサブスクを活用しているようだ。

「テレビで観ていて、“あー、この子ちょっと気になるな~”というときに使っています。フルでちゃんと聴きたいものは、ダウンロードもしますよ。最近気になったのは、男性シンガーソングライター・imaseさんの『NIGHT DANCER』です。彼の歌声やあの力の抜き方はすごくいいですね」

 こうして常に新しいものをチェックしていることが、彼女のエネルギッシュな印象に繋がっている気がする。

 では、さっそく順位を見ていこう。

カバー曲「夏をあきらめて」が首位独走! 研ナオコ自ら「歌いたい」とリクエスト

 Spotify第1位は、サザンオールスターズの楽曲をカバーした1982年のシングル「夏をあきらめて」。2位に2倍近くも差をつけたうえ、カラオケ(JOYSOUND調べ)でも2023年現在、ダントツの人気だ。当時は有線放送が先行してヒットし、音楽番組「ザ・ベストテン」(TBS系)でもランクイン。売り上げもオリコン最高5位、累計37万枚以上と、自身の楽曲の中でも上から2番目のヒットとなっている。

 ちなみに、Spotifyでの再生回数は、原曲のサザンオールスターズ版が約540万回であるのに対し、研ナオコ版は470万回と大差はない(23年12月末時点)。つまり、“サザンオールスターズのカバーだから”という理由でストリーミングでも人気が出たのではなく、むしろ、人気番組や有線放送でヒットした研ナオコ版からこの曲を知った人も多いと考えられる。

「当時、サザンオールスターズの新作アルバムが出るというので、発売前に聴かせてもらったんですよ。それで、全曲聴いたうえで、“私、『夏をあきらめて』を歌いたいなぁ、許可取ってもらえないかな?”ってレコード会社の方にお願いして、発売することになったんです」

 サザンオールスターズ版が収録されたアルバム「Nude Man」の発売日は82年7月21日であり、研ナオコのシングル「夏をあきらめて」が同年9月5日。異例の早さでカバーされたのは、このように研ナオコが早期から新作をチェックし、すぐに歌いたがった、という背景があったのだ。同曲を選んだ理由を尋ねてみたところ、

「これは、男性が主人公の楽曲ですよね。桑田佳祐さんの声や、この歌の空気感とかが好きで。でも、男女関係なく歌える仕上がりになっている感じがいいなと思いました」

 ちなみに、この2年前に高田みづえがサザンオールスターズのアルバム「タイニイ・バブルス」(80年3月21日)に収録された「私はピアノ」(80年7月25日)をカバーしてヒットさせている。だが実は、研ナオコもほぼ同時期(80年7月21日)に、同曲のメロディーに別の歌詞をつけたカバー曲「あいつのこと」を発売しているのだ(アルバム「あきれた男たち」収録)。本作は秘かに人気で、本ランキングでも38位にランクインしている。

「『私はピアノ』の原曲は原由子さんが歌っていて、これも当時、スタッフから(カバーするのを)薦められたんですが、“いやいや、私の声質を考えたら別の人が歌ったほうが売れるはず”と言って断ったんですよ。そうしたら、高田みづえちゃんが歌って大ヒットしたので、“ほら、私の言った通りでしょ?”って思いました。断ったのが悔しいなんて全く思わないですね。むしろ、ヒットすると的中させたことで、私の株も上がりましたから(笑)、みづえちゃんが歌ってよかった、と心から思っています。

 それで、そのままの歌詞だったら、みづえちゃんのほうが合っているから、私に歌わせるときはタイトルや歌詞を変えたんじゃないのかな? この時代は本当に忙しくて、あまり覚えていないんですが(苦笑)」

 それにしても、「夏をあきらめて」を改めて聴いてみると、かなりハスキーな声で、声量もかなり絞られているのが印象的だ。だからこそ、気軽に聴けるストリーミングで圧倒的に人気なのかもしれない。

「ほぼオンマイク(マイクに声を近づけて歌うこと)にしているので、力を抜いたように聞こえるかもしれませんが、実は、お腹に力を込めているんですよ」

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