北海道に行ったことがないのに始まった…漫画「クマ撃ちの女」 連載5年、取材写真で振り返る猟師のリアル

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違法行為も描くわけ

「クマ撃ちの女」をめぐるリアリティという点では、猟師たちの違法行為も印象的だ。日の出前の狩猟や、車中からの発砲……。禁止されているやり方に手を染め、主人公たちに“現実”を教える師匠キャラは、読者の人気も高いという。

 暴発を防ぐため、猟銃には獲物を見つけてから弾を込めるよう定められている。ところが主人公のチアキは、クマに遭遇したときにすぐ撃てるよう、銃に弾をこめて携帯する選択をする(のちに改める)。猟師を“自然と対峙する聖なる存在”のようには決して描いていない。

「取材で見聞きした現代のハンターの姿を、ありのままに取り入れたいとの考えからです。『こんな悪辣な輩と一緒にしてほしくない』と漫画を読んだ猟師さんから言われてしまうこともありましたが、褒めてくれる方もいます。法は、人間が決めたものであって、クマや野生動物、自然はその外にいる。そういう環境に置かれた人はどう振る舞うか、ということを描きたかった」

 明確な目的をもって取材するわけではなく、聞いた話や遭遇した出来事を材料に漫画制作に活かしている。「本当はいまの4、5倍は取材したい」と語る安島さんに言わせると「漫画は調べたら描ける。頭で考えるより調べて書くほうが楽。紙の前でウンウン唸っているほうが時間がかかります」だそうだ。

「漫画を描き始めたのが25歳からで、青年漫画の漫画家はモノを知っていなければならないと思っていました。そのためには取材が上手くなくてはと、当時は駅で電車を待つ間にホームにいる人にはなしかけ、いろいろ質問をぶつけて『間』をもたせる訓練をしていましたね」

 来月もまた北海道へ取材に行く予定だという。

デイリー新潮編集部

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