あの「エマニエル夫人」も…年末年始にじっくり観たい「大人の映画」7選

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「唐茄子屋 不思議国之若旦那」(シネマ歌舞伎/2022年10月収録)

 歴代最低視聴率を記録した大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」の、宮藤官九郎作・演出/中村勘九郎コンビによる新作歌舞伎が、映画館で楽しめる。2022年の平成中村座で連日満席となった舞台である(上映は2024年1月5日から)。

「まるでお正月のためにあるような、楽しい舞台映像です。落語の『唐茄子屋政談』と『不思議の国のアリス』を合体させた奇想天外な歌舞伎で、予備知識はまったく必要ありません。お子さんでも楽しめます。東京・浅草寺の仮設劇場で収録された舞台映像です。江戸時代を再現した小屋でしたが、当然、客席からは舞台上の細部まで見えません。その点、シネマ歌舞伎はちゃんとアップもあるので、かゆいところに手が届く面白さがあります」

 出演は、中村勘九郎・七之助兄弟のほか、中村獅童、坂東彌十郎、中村扇雀、片岡亀蔵と、豪華キャストである。

「全編、ものすごいスピードと仕掛けで展開する、まさに21世紀のエンタメ歌舞伎です。勘九郎のオトボケ若旦那ぶり、傾城・七之助の目の覚めるような美貌はいうまでもなく、特に獅童のハイテンション演技が見ものです。また、絶対に見逃せないのが、扇雀&亀蔵が演じるカエルのゲコミ&ゲゲコです。これほどのベテランが、カエルの着ぐるみでバカバカしい演技を堂々とこなす。このプロ役者根性には、頭が下がります。叫んでキレることが演技だと思っている昨今の若いタレント役者に、ぜひ観せたいですね」

 そのほか、勘九郎の2人の息子、勘太郎と長三郎も登場する。

「中村屋の坊っちゃん2人が、どこにどんな役で登場するか、これも見どころ。この2人でなければ絶対にできない設定であらわれます。ファンが拍手喝采をおくった名(迷?)場面です」

 そのほか、劇団大人計画の俳優で、「あまちゃん」の副駅長でおなじみ、荒川良々が出演していることも話題だ。

「これは、2000年に平成中村座を創始した、勘九郎・七之助兄弟の父・中村勘三郎の考え方でもありました。彼は、歌舞伎界以外の役者やミュージシャンを積極的に起用してきた。それによって、舞台に予想外の味わいが生まれ、新しい観客を引き込む契機にもなった。そもそも平成中村座は、古典歌舞伎を新感覚でよみがえらせる場で、今回のような完全新作は、初めての試みですが大成功といえるでしょう。勘三郎のあまりに早い逝去は、いまでも惜しまれていますが、息子や孫が、見事に遺志を継いでいる。どこかで勘三郎が観ていて、『よくやってるじゃねえか』とほほ笑んでいるような、そんな楽しさあふれる舞台映像です」

 年末年始に楽しい映画もよいが、こんな特集上映はいかが――

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