ハリウッド映画スタジオ経営者が明かす シリーズ映画が多い3つの理由

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 世界では毎年何百本もの映画が公開される。そのなかでも世界中を席巻し興行収入のランキングを独占するハリウッド映画。そのランキングにはある傾向があることをご存知だろうか。それはシリーズ化された映画ばかりであるということだ。

 全米興行収入ランキングの2013年度版(2013年11月18日現在)を見ると、ベスト10のうちシリーズものの続編は6本。残り4本も続編が計画されている。どうしてこれだけシリーズものが多いのだろうか?

「映画は一本だけで勝負する商品ではなく、続編をつくってシリーズ化することにビジネスとしての旨味があり、得られる利益も極めて大きい」

 そう語るのは日本人ではじめてハリウッドの大手スタジオで社長を務めた野副正行氏。近著『ゴジラで負けてスパイダーマンで勝つ―わがソニー・ピクチャーズ再生記―』のなかでハリウッド映画にシリーズものが多い理由を明かしている。

■その1:コスト上の利点

 昨今のハリウッド映画で多用されるコンピュータ・グラフィックス(CG)。作成に巨額の費用が投じられるものも少なくない。しかし一度CGデータを作成すれば、その後は初回よりずっと安いコストで何度もデータを“使い回す”ことができる。既存データをアレンジして新しいシーンに仕上げることも可能だ。
 同じことが映画の企画やキャスティングといったソフトウェアの面や、撮影用の大道具・小道具といったハードウェアの面についても言える。第一作が作業や費用の面で「出血」したとしても第二作以降でカバーでき、シリーズ化が続くほど余裕が生まれていく。

■その2:リスクマネジメント

 映画事業は一作一作の成功・失敗によるスタジオの業績への影響が非常に大きく、年ごとのアップ&ダウンが激しい。だが、スタジオも企業である。あまりに不安定な業績は株主が許さないし、従業員にも不安を与える。その点、続編は当たった前作を超える可能性はあまり高くない一方で、大きく外れるリスクは、別の新たな作品を一からつくりだす場合より小さい。ある程度数字の読める作品をラインナップに組み込むことは、スタジオ経営の安定に寄与する。

■その3:原作の枯渇

 映画の企画のベースとなる原作小説やオリジナル脚本はいつでも枯渇している。映像化を前提としていない小説では映画に仕立てられる作品は限られるし、ベストセラーの場合、制作者の間で奪い合いとなって映画化権料が高騰する。一方オリジナル脚本の場合、一定以上の面白さを観客に保証する原作がないことには、宣伝広告やマーケティングの上でマイナスだ。原作に縛られないのはいいが、だからといって新奇なアイデアが無尽蔵に湧いて出てくるわけでもない。有望な原作を獲得できた場合、一作目の企画段階から二作目への連続性を考慮しておく必要がある。

■シリーズ化は甘くない

 しかしシリーズ化と言っても、甘くない。野副氏の分析によるとシリーズものの興行収入は、第一作を100%とすると、第二作では70%に落ち、第三作目となると70%×70%で、せいぜい50%にまで落ちてしまうという。これは「駄目なシリーズもの」の例ではない、一作目が成功した作品でも、こういうことになるのである。
 そのような厳しい状況のなか野副氏が手腕を発揮し、ソニー・ピクチャーズの看板シリーズとなった「スパイダーマン」シリーズは第一作目の全米興行収入が404億円、第二作が374億円で93%、第三作目が337億円で83%と抜群の好成績をあげている。
 この三連続ホームランのような偉業を達成できたのは、野副氏が社長就任時より進めた経営改革の賜物だろう。

デイリー新潮編集部