あの「エマニエル夫人」も…年末年始にじっくり観たい「大人の映画」7選

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「マエストロ:その音楽と愛と」(ブラッドリー・クーパー監督/2023年、アメリカ) 【Netflix配信】

「映画は映画館で観るものだ」と、徹底的に配信映画を嫌っていたスティーヴン・スピルバーグがついにNetflixの軍門に下り、製作に参加した話題の作品である。よって配信で観る映画だが、一部劇場でも上映されており、上映館はHPで確認できる。

「《ウエスト・サイド・ストーリー》の作曲者で、カラヤンのライバルといわれた、指揮者・作曲家レナード(レニー)・バーンスタイン(1918~1990)の伝記ドラマです。ただし、夫人のフェリシアとの関係に焦点をあてた、夫婦物語になっているので、音楽に詳しくない方でも楽しめます。レニーは両性愛者でしたが、そのために何度もこわれそうになる家族関係を、必死で乗り越えていこうとする姿が描かれます。両性愛といっても、強烈なシーンはないので、家族で安心して観られます」

 フェリシア役キャリー・マリガン、監督でレニー役ブラッ ドリー・クーパーの、超そっくりメイクが話題だ。

「よくぞ、ここまで似せられたものだと、言葉を失うほどでした。特殊メイクは、アカデミー賞メイクアップ賞を2回受賞している日系のカズ・ヒロですが、もうここまでいったら、“芸術”といえるでしょう」

 だが、メイクだけではない。特にクーパーは、6年間をかけてレニーの録音や映像を徹底的に研究して、役作りに挑んだという。ほぼ全シーンでタバコを吸っているチェーン・スモーカーぶりも、実像そのままだ。

「後半の山場は、1973年、イギリスのイーリー大聖堂における、マーラーの交響曲第2番《復活》の演奏シーンです。オリジナルはレニーの熱血指揮が強烈な感動を呼ぶ、歴史的な演奏です。DVD化されていますし、昨年、NHKでも放映されたので、ご覧になった方も多いでしょう。あの映像が再現されるのですが、その完全コピーの完成度の高さに驚かされました。しかも演奏は、プロの指導のもと、実際にクーパーが指揮して録音された音だそうです。この6分16秒は、まるでレニーの魂が乗り移ったかのようです。オリジナル映像はYouTubeでも公開されていますから、比べてみるのも一興でしょう」

 さらにこのシーンには、ある決定的な見どころが含まれているという。

「このオリジナル映像は、最後の最後、いちばんいいところで、カメラが、レニーではなく、教会の天井画をえんえんと映すんです。やはり、ファンとしては、レニーの指揮姿をもっと見たかった。しかしこの映画では、ちゃんと、レニー(クーパー)で最後まで再現してくれます。これでファンもようやく溜飲が下がるのではないでしょうか」

次ページ:「唐茄子屋 不思議国之若旦那」(シネマ歌舞伎/2022年10月収録)

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