あの「エマニエル夫人」も…年末年始にじっくり観たい「大人の映画」7選

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 コロナが5類に移行してから、初めての年末年始。ひさびさに繁華街に出て、のんびりと映画を楽しまれる方も多いだろう。そこでデイリー新潮ならではの「大人のための映画」厳選7本を、映画や音楽に詳しいライターの富樫鉄火さんに解説してもらいながら、ご案内しよう。

「ナポレオン」(リドリー・スコット監督/2023年、アメリカ)

 すでに12月初旬から公開され、ヒットがつづいている超大作である。

「スタンリー・キューブリックがやりかけて挫折した大企画で、ひさびさの、本格的歴史映画です。近年の歴史人物を描く映画は、ある特定の時期だけを取り上げるものが多かったのですが、今回は、ほぼ全生涯を描いており、見ごたえ十分です。世界史の教科書でおなじみ、アウステルリッツの戦いやワーテルローの戦いも出てきます。これら戦争シーンの迫力が尋常でなく、こればかりは映画館で観なければ意味がありません」(富樫鉄火さん。以下同)

 最大11台のカメラ、8000人のエキストラが起用されたというだけあって、近年まれに見る壮大なシーンが展開される。

「かなり綿密な考証がおこなわれたようで、当時の戦争が、どんなふうに行われていたか、説得力抜群です。戦闘場面がリアルな映画といえば、アニメながら本格的な考証を取り入れた『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』(原恵一監督/2002年)が有名ですが、あの新鮮さに匹敵します。防衛大学の教材にしてはどうでしょうか」

 ダヴィッドの油彩画で有名な「皇帝ナポレオンと皇妃ジョゼフィーヌの載冠」 で有名な場面も、絵画そのもののように再現される。美術ファンは驚くのではないか。主演は「ジョーカー」でアカデミー賞主演男優賞を受賞したホアキン・フェニックスだ。

「内向的で複雑だったといわれるナポレオンの性格を、ホアキン・フェニックスが、うまく表現しています。抑制された顔芸は、歌舞伎を見るかのようです。ナポレオンは女性関係も派手でしたが、余計な挿話はカットし、皇妃ジョゼフィーヌとの関係だけに絞った脚本も、うまくできています。ジョゼフィーヌ役のヴァネッサ・カービーは、色悪美人ともいうべき迫力で、跡継ぎが生まれないために微妙な関係になる夫婦のやりとりは、戦争シーンよりも見どころかもしれません。その意味で、まさに大人のための映画という感じがします」

 2時間半の長丁場だが、あっという間に過ぎる。戦争シーンのみならず、役者の顔のドアップもなかなかスゴイので、もし大スクリーンのIMAX上映があれば、ぜひ、そちらでの鑑賞をお薦めする。

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