「“助っ人外国人”という呼称は失礼すぎる」「セ・リーグはDH制を今すぐ導入すべき」 日本野球のガラパゴス化を避ける二つの提言(中川淳一郎)

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 阪神タイガース、38年ぶりの日本一おめでとうございます。しかし、日本一の回数「2回」って楽天の「1回」に次ぐ12球団中ワースト2位なんですよね。私自身も阪神ファンですが、弱い時代が長いのに応援し続けるファンの忍耐力の強さには感服します。

 阪神の話になると出てくるのが巨人との「伝統の一戦」です。まぁ、もう特別扱いしないでいいんじゃないですかね。だって、巨人の日本一回数って22回ですよ! 歴史的に見たら同格扱いするのはおかしい。

 そんなことから、阪神優勝についてお祝いはするものの、プロ野球について、「???」となるようなことを列挙し、ますます日本の野球が発展するための提言を素人ながらさせていただきます。

 まずは外国人選手の「助っ人」という呼び方です。スポーツ紙も含め、メディアは慣用句のごとくこの呼称を使います。しかし、阪神優勝ののろしを日本シリーズ第7戦に上げたノイジー選手の3ランホームランを見て、彼のことを「助っ人」と呼べますか? レゲエヘアでベンチを盛り上げて「ミエちゃん」と呼ばれたミエセス選手は、正直大した活躍はしなかったし、岡田彰布監督からセ・リーグ制覇時に「ミエちゃん、あの、成績にちなんだ暴れ方をしてください」とツッコまれた。しかし、日本シリーズ制覇の時は、「今日はみんなが主役。ミエちゃん。ふふふ。成績は問いません」と岡田氏から言われた。そんな選手たちを「助っ人」なんて呼ぶのは彼らに失礼。外国出身だからって「助っ人」と呼ぶのはおかしい。「チームメイト」であり「仲間」「盟友」です。

 続いては、両リーグDH制の導入も喫緊の課題ではないでしょうか。今年のプロ野球は、完全に投高打低でした。セ・リーグに関しては、チーム打撃成績で打率1位は巨人の.252、本塁打は同じく巨人の164本。得点は阪神の555が1位でした。最下位の中日は.234、71本、390点です。パ・リーグの首位打者はオリックスの頓宮(とんぐう)裕真選手で、打率.307。これはパ史上最低打率の首位打者。

 翻って1985年に日本一になった阪神タイガースを見れば、今より13試合少ないのに打率.285、219本塁打、731得点です。今年のような投高打低だと、投手が高評価を得て、MLB移籍を後押しする結果となる。打者の成績は上がらないため、MLB移籍もならず、年々レベルを上げる投手よりも評価されず年俸も上昇しない。

 こうした状況打開のためにも、セ・リーグもDH制を導入してはいかがでしょうか。継投や代打起用の駆け引きが面白い、といった評価もある「投手が打席に立つ」制度ですが、もう、やめていいのでは。何しろ9番の投手が打席に立たないだけで相手投手は気が抜けませんし、打者としても活躍の機会が増える。なぜ、セ・リーグはかたくなにDH制を導入しないのかさっぱり分かりません。

 あと、最大の疑問は「誠意」ってヤツですよ。新人投手やFA選手に対して「背番号『17』を用意して最大限の誠意を見せる」みたいな記事が出ますが、超絶実力主義のプロ野球界で「誠意」こそ大事って風潮作るのは違和感ありまくり。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2023年11月23日号掲載

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