「1.5次流通」で日本のフードロスを削減させる――関藤竜也(クラダシ代表取締役社長)【佐藤優の頂上対決】

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クラダシの未来形

佐藤 いま協賛メーカーはどのくらいになりましたか。

関藤 2023年6月末時点で約1400社です。ユーザーは47万人を超えたところです。

佐藤 非常に大きなマーケットを作り出したことになりますね。

関藤 メーカーがある程度の数になると、協賛していないメーカーが焦り出すんです。だからどんどん増えていく。

佐藤 ここまで規模が大きくなると、ディスカウント業界と競争になりませんか。

関藤 競争にはならないですね。ディスカウント市場は4兆円と非常に大きいのですが、メーカーが商品を出しているわけではない。基本は卸売業者が自分の在庫回転率が悪いと出してしまう「投げモノ」です。メーカーとしてはそこに商品を出したくないから、これまで丁寧にお金をかけて廃棄していたわけです。

佐藤 クラダシはメーカーと直接取引をしているのですね。

関藤 はい。ただ、私は1次流通を壊したいとは思っていない。いまECで扱う量が増え既存のリアル商店が消えていますが、メーカーから消費者に流れる商流は変わっていません。だからどこかで滞るところが出てくる。そこにバイパスを作る。それが1.5次流通です。

佐藤 取引メーカーやユーザーの数値目標はあるのですか。

関藤 できるだけ多くの人に使っていただきたいとは思っていますが、具体的な数字はないですね。もちろん課題はあります。一つには、安いけれども量が多い、という声を数多くいただいている。ジュースだったら48本とか、お菓子だったら24箱など、ロットが大きいからです。それには使い方のシーンを提案していこうと思っています。例えば、学校の部活でジュースを買っていただくとか、会社の納会やイベントにワイン12本を入れていただくとか。

佐藤 イベントだったら大勢訪れますし、開催日が前々から決まっていますから、事前に準備できる。

関藤 一個一個買うのだったら、コンビニの方がいいし、今日明日届けてほしいということならアマゾンには勝てない。それらと勝負しているわけではありませんが、ユーザビリティーは上げていきたいですね。

佐藤 フードロス削減に貢献しているわけですから、環境に配慮したイベントや集まりには必須じゃないですか。

関藤 その通りです。それからクラダシの未来形としては、メーカーの倉庫とクラダシの倉庫を一体化させられないかと思っています。これによって食品メーカーの輸送の手間とコストを削減できますし、フードマイレージの問題も解決できる。北海道のホタテが東京に来て、北海道の消費者が買って、そこに届けるようなことをしなくてすみます。そのためには、私どもがいくつか拠点を作っていかなければなりません。

佐藤 そのデータがたまれば、情報産業にもなっていきますね。

関藤 はい。倉庫管理だけでなく、需要予測や商品開発といった事業にもつながっていくと思います。

佐藤 私は母校の同志社大学で教えていますが、8年前に教え始めた時と比べ、学生の希望就職先がかなり変わってきました。もちろん切った張ったの世界で高収入を得たいという学生もいます。でも社会的に意義のある仕事がしたい、という学生が増えていますね。クラダシは選択肢の一つになります。

関藤 2030年くらいには就職人気ランキングで上位に入っていると思いますよ(笑)。私たちには自らが社会貢献活動を行うために設立したクラダシ基金という取り組みもあり、地方創生事業・フードバンク支援事業・食のサステナビリティー研究会・教育事業の四つの項目で支援活動をしています。地方創生事業では、社会貢献型インターンシップ「クラダシチャレンジ」というプログラムを行っています。学生に交通費などを支給し、人手不足の地方でミカンやパイナップルなどの収穫のお手伝いをしてもらうのです。

佐藤 それはいいですね。どのくらいの学生が参加しているのですか。

関藤 200人くらいが約20地域で活動してきました。就職する前に地方の現場がどうなっているのか、体験してもらいたい。自分がそうだったように、学生に原体験の場を作ってあげたいんですね。彼らの中からソーシャル・アントレプレナー(社会起業家)が1割でも2割でも出てくれれば、日本はとてもいい方向に進むのではないかと思いますね。

関藤竜也(せきとうたつや) クラダシ代表取締役社長
1971年大阪府生まれ。京都外国語大学卒。95年住金物産(現・日鉄物産)入社。鉄鋼部門、外為部門を経て98年から中国の国立大学に1年間留学。その後現地事務所に勤務し2000年に帰国。翌年退社してコンサルタント会社に移り、14年クラダシを設立。23年に同社を東証グロース市場に上場させる。

週刊新潮 2023年11月2日号掲載

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