「高血圧」「糖尿病」「脂質異常」予防可能性10倍以上の歩行量とは? 20年以上の研究で明らかに

ドクター新潮 ライフ

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達成できないのはどんな人?

 では、8千歩歩いているのに20分の速歩きを達成できないのはどんな人たちなのでしょうか。例えば床屋さんです。立ち仕事で慌ただしく歩くものの、外に出ることが少ないので速歩きの時間も減る。また旅館の女将(おかみ)さんもそうです。同様に外に出る機会が少ないことに加えて、着物を着ているので歩幅が狭くなり、中強度の歩行が足りなくなるのです。

 このようにある意味で特殊な環境にいる人でなければ、8千歩歩けば20分の速歩きは無理なく、自然と達成できます。つまり、努力して20分の速歩きをしようとする必要はなく、むしろ大事なのは8千歩歩く努力をすることなのです。

 厚生労働省の国民健康・栄養調査報告(令和元年)によれば、日本人の1日の平均歩数は男性で6793歩、女性で5832歩となっています。だいたい10分歩くと千歩になりますから、あと10~20分、余計に歩くことを心掛ければ「8千歩・20分」は実現できるといえます。

無理にジムに通わなくても…

 私の場合、自宅と研究所の通勤往復だけで4千歩から5千歩になります。残りの3千~4千歩は、無理にジムに通ったりしなくても、例えば職場で、電話連絡でも済むところをあえて階段を昇って直接用件を伝えに行くとか、ちょっとだけ不便を受け入れれば補うことは可能です。

 また、認知症の予防効果が出るのは「5千歩・7分半」です。その手前の「4千歩・5分」は、家からほとんど出ない「閉じこもり状態」です。このことから、認知症を予防したいのであれば、とにかく家から出て毎日千歩プラスすればいいということになります。毎日が無理であれば1週間単位でも構わないので、週何日か外に出て1日平均千歩を上積みする。

 閉じこもりがちな人には1日平均千歩プラスするのはハードルが高いと思われるかもしれませんが、例えば近所のスーパーに買い物に行けば往復で2千歩くらいは稼げます。2、3日に1回買い物に行くだけで、認知症予防効果は得られるわけです。したがって、認知症予防のためには、とにかく家に閉じこもりきりにならないよう心掛けることが重要になってきます。

 加えて言えば、外出して買い物をすると、必然的に他者との会話の機会が増えたり、またお金の計算などで頭を働かせます。これも認知症予防には有効です。

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