母親に無視された「お父さんに会いたい」の気持ち 幼少期の“連れ去り”が40歳男性にどんな悪影響を与えたか

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恋人との関係が続かない

 大学生時代、亮輔さんにはガールフレンドが途切れなかった。調子に乗っていたわけではないが、親とのしがらみから解き放たれたこともあって、彼自身も時間のある限り、デートもした。

「だけど続かないんですよ。僕が歪んでいるからでしょうね。母への憎悪に自分が潰されるような感覚はときどきあったし、そういう感覚に襲われると女性に慰めてほしくてたまらなかった。女性を憎んでいるのに愛している。そういう体質になってしまったのかもしれません」

 いや、それは違うなと彼はすぐ撤回した。言い訳にすぎないともつぶやいた。

「学生時代はそれでもよかった。ただ、社会人になってからも、女性といい関係が作れなかったので、だんだん自分自身を呪うような気もちになりました」

 亮輔さんはときどき、ギクッとするような言葉を使う。母を呪いたくなるなら、まだわかるのだが、彼は「自分自身を呪う」と言う。憎悪はめぐり巡って自身に向かっていったのかもしれない。

後編【交際ゼロ日婚、性的関係を拒む妻に「俺を騙したのか」 不倫夫が抱いてしまう哀しき愛憎の根本原因】へつづく

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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