【京アニ事件初公判】犠牲者36人に「まさかこんなにたくさんの人が亡くなるとは…」未必の故意とでも言いたげな青葉被告の発言を専門家はどう見たか

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 死亡36人、重軽傷32人、戦後最多の犠牲者を出した京都アニメーション(京都市伏見区)放火殺人事件の惨劇から4年。9月5日、青葉真司被告(45)の裁判員裁判が京都地裁で始まった。朝から報道のヘリが上空を飛び交う中、地裁の向かいの京都御所の一角に設けられた傍聴券の抽選会場には、たった35席の傍聴席に500人以上が押し掛けた。青葉被告の供述を、甲南大学の園田寿名誉教授(刑法)に解説してもらった。【粟野仁雄/ジャーナリスト】

ガソリンの真の恐ろしさ

 午前10時33分頃、車椅子で法廷に現れた青葉被告は、「私がしたことに間違いありません」と起訴事実を認めた上で、「事件当時はこうするしかないと思っていたが、こんなにたくさんの人が亡くなるとは思わず、現在ではやり過ぎたと思っている」と話したものの、謝罪の言葉は一切なかった。

 自らが生死の境をさまようまでの大火傷を負った青葉被告は、ガソリンの真の恐ろしさを知らなかったのだろう。そういった意味では、この証言は恐らく噓ではない。

 ガソリンは液体だけでなく気化したものでも容易に引火して大爆発を起こす。ガソリンの恐ろしさを物語る事件の1つとして、1995年7月に起こった東住吉事件がある。

 保険金目当てで小学生の娘を殺害したとし、母親の青木惠子さんと内縁の夫が逮捕され、約20年にわたり刑務所に収監された。内縁の夫が「ガソリンを撒き、火を付けた」と自供したためだ。しかし、再現実験を行ったところ、「ガソリンを撒いてライターで火を付けると、本人が火傷をしないことはあり得ない」ことが分かり、再審無罪となった。車から漏れて気化したガソリンに引火し、爆発した可能性が高いと判断された。京都アニメーションの事件同様、気温が高くガソリンが気化しやすい7月に起こった事件だった。

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