娘を失った母が激白「初公判を待ち望んでいた夫も亡くなった」 京アニ事件から4年、遺族の胸の内は

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「公判には行かない」

 孫娘(当時21)を失った、近畿地方在住のさる遺族は、公判に際しこのような思いを抱く。

「今さら謝られたって、孫は帰ってきません。動機を知ってもしょうがないと考えてしまうんです」

 今もリビングには、愛孫(あいそん)の写真が飾られている。

「孫は高校に通いながら、アニメーター養成塾に行くためのお金をバイトしてためていました。京アニの社員になった時には本当にうれしそうに報告してくれましたよ。でも今では“もしあの時落ちていたら今も生きていたのにな”と、つい考えてしまいます。頑張って夢をかなえたのは喜ばしいことのはずなのにね……」(同)

 青葉被告に関しては、

「すぐに死刑にしてくれと事件当時は思いました。今は判決が出て、一つの終わりを迎えられればそれでいいと考えています。公判には行きません。実際に被告を目にしたら、自分がどうなるか分からないので」(同)

「私たちが悼んでも遺族の方が救われるわけではないですが…」

 それぞれの遺族が消えない悲しみを胸に、4年間を過ごしてきた。その一方、被告の母親の兄、つまり伯父とその妻も、また別の苦しみを味わっている。

 伯父夫妻は事件後に取材を受けたことで、初めて被告が甥だと知ったと言うが、

「いくら会ったことがなくても、身内には違いありません。今年は事件のあった日に、懇意にしているお寺でせめてもの供養をしてもらいました。私たちが悼んでも遺族の方が救われるわけではありませんが、しっかり向き合わねばと思っています。記者の方に“あなたたちが苦しむことはない”と言われましたが、そうしないと私たちも心が壊れてしまいそうなんです」

 現在、事件があったスタジオは取り壊され、京アニの新しい事業所と遺族や関係者向けの慰霊碑が建設予定だ。近くに住む男性いわく、

「近隣住民には、事件がいまだにトラウマという人もいます。以前は京アニさんも町内会に入っていて、社員さんも住民とあいさつを交わすような関係性でした。また前のような光景が戻ってくるといいんですけどね」

 多くの人の生活を一変させた青葉被告。公判で謝罪の言葉を口にしようと、かつての日常が戻ることはない。

週刊新潮 2023年8月17・24日号掲載

ワイド特集「一瞬の夏 永遠の夏」より

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