4千回の実地調査で見えた「良い高齢者施設の見分け方」 オススメの11施設をプロが紹介!

ドクター新潮 ライフ

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指標となる日常生活動作

 その指標の一つが自立生活の指標となる日常生活動作(ADL)だ。(1)食事、(2)排泄、(3)入浴、(4)身繕い、(5)移動、(6)歩行などである。さらに、家事、買い物、食事の準備といった日常生活における応用的な動作である手段的日常動作(IADL)もある。(1)家事、(2)買い物、(3)服薬管理、(4)金銭管理、(5)電話利用などADLよりも複雑な動作。これらを他人の助けなくすべて自力でできれば「自立」に区分され、補助を必要とする動作の数と、それに要する分単位の所用時間の組み合わせで「要介護」の1から5までのどれに相当するか判断されるのだ。

 ただ、「要介護」に分類された方には、少しずつ自分のことを言葉できちんと説明できなくなっていく傾向も見られる。そういう将来を見越して、経験や知見に富んだ心ある医師や看護師といった医療スタッフの有無、さらには設備が充実しているかどうかも入居先選びの大きな判断材料となるだろう。

 そして「最期」である。ここでは会話はもとより、文字や身振り手振りでも意思の疎通ができない方が少なくない。それでも、余生を健やかに過ごすことは決して難しいことではない。豊かな経験と思いやりを持つスタッフが、鋭い観察力と想像力をもって介助に従事できるかどうかが重要だ。また、疾病や持病を要因とする終末期の方もここに該当する。

スウェーデンで開発されたリラックス法

 いまや600万人以上とされる認知症患者にも、高齢者に必須な「栄養の摂取」「適度な運動」「社会参加」という三つの要素が不可欠なことに変わりはない。介護より病気の治療が優先されて、これらがおろそかにされることがあってはならない。食欲がわかない食事、慢性的な運動不足、そして生活の基本である日常会話の欠如は認知症を進行させてしまうからだ。

 15年ほど前、私は米国フロリダ州の認知症専門施設を視察に訪れたことがある。そこで耳にした「認知症の高齢者のケアを担う介護スタッフには、新生児や乳幼児、幼稚園児たちを世話した経験を持つ者が適している」との説明がいまも鮮やかな記憶として残っている。

 日本でも、たとえば千葉県浦安市の介護付有料老人ホームである舞浜倶楽部では、スウェーデンで開発された未熟児ケアから始まった「タクティール(R)ケア」と呼ばれるリラックス法が導入されている。

 これは、手のひらで相手の手足や背中を柔らかく包み込むように触れていくことで“安心と信頼のホルモン”と呼ばれる「オキシトシン」の分泌を促すとされるものだ。これで体の痛みが軽減し、興奮状態や不安感を和らげ、心が落ち着く効果が期待できる。認知症の患者についても、入居者の精神的な安定やストレスの緩和に大きな効果を上げているという。

 新生児は動物的な本能と生理的欲求、そして快・不快という感情で生きているとされる。首がすわったり、寝返りをうてるようになり、ハイハイからつかまり立ちを経て、自分の足で歩くように育っていく。同時に知力や思考力も発達する。

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