フランス暴動から1カ月… 少年遺族より「射殺した警官」支援に寄付が集まる国民感情

国際

  • ブックマーク

マクロン大統領の対応は…

「ナエルに正義を」とデモ参加者は言いますが、デモに便乗した暴動に関する正義はどうとらえられているのでしょうか。

 一連の暴動による民間企業の被害額は1,500億円を超えたといわれています。被害に遭っているのは今回の事件と全く無関係の人ばかりです。 ヴァル=ド=マルヌ県のライ=レ=ローズ市では、市長の個人宅が襲撃されました。焼夷弾のようなものが撃ち込まれ、炎上した車が家の門に突っ込んだのです。その時市長は不在で、妻と2人の子どもの就寝中に起こった出来事でした。市長宅襲撃事件は殺人未遂として捜査されています。

 ナエルさんの母親らは暴動を止めるよう呼びかけ、キリアン・エムバペなど著名なサッカー選手たちが「暴力を終わらせて、平和的、建設的な表現をするべき」とツイッターなどで意見を共有しました。

 今回の暴動に対する疑問や容認できないという声は上がっています。マクロン大統領は、未成年が暴動に参加して加害者となった場合、保護者に罰金刑を科すことや、暴動の呼びかけが行われているSNSを停止させる可能性について言及しました。

 大統領にしてみれば「市民と警察の間の綱渡り」と言われるように難しい状況ではありますが、「正義」に基づいた冷静な判断が求められています。

ヴェイサードゆうこ
翻訳家・ジャーナリスト。青山学院大学国際政治経済学部卒。ITベンチャーから転身し、女性向けweb媒体のライター、飲食専門誌の編集記者として執筆。2016年よりフランスに移住し、現在はYouTubeで現地情報を発信中(http://bit.ly/2uQlngQ)。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 4 5 次へ

[5/5ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。