フランス暴動から1カ月… 少年遺族より「射殺した警官」支援に寄付が集まる国民感情

国際

  • ブックマーク

Advertisement

殺人の前にある「正義」の議論はどこに。

 もちろん命が奪われるようなことがあってはならず、警察等の権力による暴力・殺人行為が認められないのは当然のことです。ただ今回、警察の行動の適法性を議論する以前の、法律を守るべきだったという意見は表立っては聞こえてきません。無免許運転や禁止車線の走行、検問の制止を振り切ることなどの違法行為がなければ事件も起きていないのに、です。

 警察の制止を振り切る犯罪行為は2022 年だけで2万5,822件発生しています。まずはこの対策が急務ではないでしょうか。こうした行為で負傷する警察官が相次ぎ、2016年にパリ近郊で2人の警察官が重傷を負ったことを受け、警察の銃使用に関する法律が変更された背景もあります。警察官が銃を構えるのは、そうしないと自身に危害が及ぶ可能性があるからです。現在は、生命に危機が及ぶなど5つの条件の下に警察の職務中の発砲行為が認められています。その際、事前に警告することも条件のひとつです。

 今回、ナエルさんの車の同乗者は、ル・パリジャン紙に「警察の一人は『エンジンを止めろ、さもなければ撃つぞ!』と言ったのを聞いた」とコメントしています。遺族側の弁護士等は「『お前の頭を撃つぞ』という発言からして、明らかに殺人の意図があった」と主張しています。

 が、事件を収めた動画を見ると、車が発進したせいで警察官の体が押されています(警察官は車を触ってはいけないという指摘もあるのですが)。発砲により死亡したという事実が看過できないとしても、殺意を持って職務に当たった、という主張には違和感を覚えました。

次ページ:マクロン大統領の対応は…

前へ 1 2 3 4 5 次へ

[4/5ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。