新作「君たちはどう生きるか」は好スタートも……今後のスタジオジブリに5つの不安材料

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ロケットスタートの高収益だが……

 事前の宣伝活動はなし、明らかにされたのはタイトルとポスタービジュアルのみ……。7月14日、長編映画からの引退を撤回したスタジオジブリの宮崎駿監督(82)の10年ぶりの新作「君たちはどう生きるか」が公開された。

 タイトルは、宮崎監督が少年時代に読み、感動したという吉野源三郎氏の著書『君たちはどう生きるか』から借りたものだ。

 公開初日に声優キャスト陣や主題歌が明かされ話題を集めたが、公開4日間で観客動員135万人、興行収入は21.4億円だった。ジブリ映画で最高興収の316.8億円を記録した01年の「千と千尋の神隠し」が、同じ初動の4日間で記録した、19億5437万6300円を超えたことも、さらに話題となった。

 ロケットスタートで、どこまで数字を伸ばすのかが注目される同作だが、同時に文字通りのジブリをめぐる5つの不安材料が浮き彫りになったとの指摘が出ている。

その1 賛否が分かれる作品への評価

 公開直後から、大手映画情報サイト「映画.com」には鑑賞した映画ファンのレビューが続々と寄せられた。

〈混沌の時代を生きる日本人として見て欲しい〉
〈やはりジブリは、宮崎駿だ〉
〈ジブリファンは絶対に見るべき〉

 など、手放しで絶賛する評価がある一方、

〈今までの宮崎作品で最も退屈で残念な作品〉
〈ジブリ最強期に子供でよかった〉
〈伏線を回収しない映像界の金沢21世紀美術館〉

 などの辛らつな評価も目立った。

「昨年12月に公開された映画『THE FIRST SLAM DUNK』は、公開前に声優のキャスト陣を明かしたのみで、ストーリーは一切明かされず。それでも興行収入148億円を突破(23日まで)のヒット作となりましたが、劇場に足を運ぶ大半の観客は、基本的な登場キャラなどが分かっているので、ストーリーを堪能することができてリピーターが続出しました」(映画担当記者)

 しかし、今回の作品は、どんなキャラクターが登場するのか、どんなストーリーかなど一切知らないまま。もしかしたら、ジブリ史上、最もガッカリな作品になってしまう可能性もあった。

「『怖い物見たさ』で劇場に足を運んだファンが多かったのでは。私は土曜日の夕方に鑑賞しましたが、観客は30代以上の大人が多かったです。正直、子どもが見ても『なんのこっちゃ?』と思ってしまうのでは。ただ、ジブリの歴代作品が盛り込まれているので熱烈なジブリファンなら楽しめるはずです。映像と久石譲さんの音楽は高いクオリティーでした。一言でまとめると、『(主人公の)少年の異世界大冒険』ですが、哲学的思想や反戦主義の宮崎氏の思想がふんだんに盛り込まれていました。宮崎氏としてはやり切ったかもしれませんが、観客は置いてけぼりを食らった感じです。レビューや口コミを聞いて、『やっぱり見るのを止めた』と思う人も少なくないはずで集客にブレーキがかかることも十分にあり得ます。このまま順調に客足が伸びると楽観視することはできないはずです」(同)

 案の定、公開2週目となった21日~23日の「国内映画ランキング」(興行通信社調べ)では、前週に初登場で獲得した首位を、公開初週のトム・クルーズ(61)主演の最新作「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」に譲り2位にダウン。観客動員は52万9000人、興行収入は8.3億円だった。

「もはや、宮崎監督がどんな映画を作ろうとも、誰も物申せる人がいません。それでクオリティーの高い作品を連発していたうちはいいのですが、もはや“裸の王様”。作品が公開されないと、的確な映画評を受けることができない状態に陥ってしまったのです」(アニメ業界関係者)

 今年2月下旬同作の初号試写後、読み上げられた宮崎監督のコメントは、なんとも絶妙な表現だった。

「おそらく、訳が分からなかったことでしょう。私自身、訳が分からないところがありました」

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