教え子に性暴力の「小学校教師」 公判で明かされた卑劣すぎる“口止め工作”の中身

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「弟がどうなってもいいのか」

 検察側の冒頭陳述では、あろうことかAさんの弟や、別の生徒も巻き込んだ、卑劣な河嶌被告の行状が明らかになった。

「Aさんの通っていた小学校に勤務することになった被告人は、生徒を怒る時に大声を出したり椅子を蹴ったりしていたので、Aさんや友人は、被告人を怒らせてはいけないと感じていた。その後Aさんの担任になった被告人は、Aさんだけを長時間膝の上に乗せたり、Aさんだけを一番前の同じ席に座らせるなど、他の生徒と異なる扱いをした。膝に乗せて太ももや胸を触るなどしたほか、教室にAさんを呼び出してキスをしたり、ひとりでAさんを教室に残し、陰茎を触らせたり口淫を繰り返し、それを撮影していた」(検察側冒頭陳述)

 そんな日々が続くなか、Aさんが中学受験をすることを決め、担任である河嶌被告にこれを報告すると、河嶌被告はAさんに告げたのだという。

<キスを嫌がる素振りを見せると内申点を下げる>

 宿泊を伴う学校行事でも呼び出されたうえ、性的虐待を受け続けたAさんだったが、河嶌被告から怒鳴られるなどしたことからさらに恐怖を覚え、拒絶できないまま学校生活を続けた。卒業式で河嶌被告から連絡先を聞かれたAさんは、断って怒らせることを恐れ、従わざるを得なかった。

 さらに、Aさんが中学校に進学したタイミングで、河嶌被告はAさんの弟の担任を受け持つことになった。中学に行ってもメールが続くなか、河嶌被告からの“誘い”を断ったAさんに、河嶌被告はこう言ったという。

<弟がどうなってもいいのか>

 自身が小学生の頃は内申点による脅迫を、卒業後は弟の身に危険がおよぶと匂わされ、Aさんは河嶌被告の要求に従い続ける。河嶌被告は小学校にAさんを呼び出しては、性的虐待やその撮影を続けた。そんな日々の果てに、起訴状のような、アパートでの性的暴行未遂事件の被害に遭ったという。

「胸が張り裂けそう。絶対に許せない」

 性的な行為を撮影された者が、拡散をおそれるのは当然のことだ。だが、河嶌被告は、こともあろうにAさんの同級生に、こうした写真などを送信していたこともわかっている。

 Aさんは長年、被害を打ち明けることができずにいた。Aさんの母親は一度、娘が持っていた河嶌被告との「交換日記」を見つけた。そこには河嶌被告からの<会いたい>といった言葉があったが、性的な関係を窺わせる内容が記載されていなかったことから、一連の性的虐待は発覚しないまま、時は過ぎた。警察が河嶌被告のパソコンからAさんの動画や静止画を発見したのは、彼女がやっと周囲に自身の経験した“性被害”を語れるようになりつつあったころだった。

<被害を知り、娘は1人でずっと相談できなかったのだと胸が張り裂けそう。絶対に許せない>

 Aさんの母親は調書にこう語っている。

 かたや河嶌被告の弁護人は冒頭陳述で“真剣交際”を主張し続けた。

「Aさんは当時、この関係性を楽しんでいた。2人の間に無理やりとか、力ずくで、といった関係はない。レイプの加害者、被害者ではなく、別れた女性を追い求める哀れな男性、これが真実です」(弁護側冒頭陳述)

 当時、小学生だった教え子との真剣交際を訴え、無罪を主張する40代教師。彼の言い分が“真実”かどうかは、これからの公判で明らかになることだろう。

高橋ユキ(たかはし・ゆき)
ノンフィクションライター。福岡県出身。2006年『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』でデビュー。裁判傍聴を中心に事件記事を執筆。著書に『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』『木嶋佳苗劇場』(共著)、『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』、『逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白』など。

デイリー新潮編集部

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