薬は何種類から害になる? たんぱく質は1日何グラム必要? 高齢者に必要な「増食」「減薬」を指南
転倒が怖い
時に「袋詰め」と揶揄されるように、私たち薬剤師のことを単に医師が処方した薬を袋に詰めているだけの存在と思われている方もいるのではないでしょうか。
しかし、薬剤師には、処方された薬に不明点や疑問点がある場合、医師に問い合わせる義務があります。これが疑義照会です。当然、患者さんが薬に疑問を感じているのであれば、それを受けて薬剤師が医師に確認することができます。単なる袋詰めと思わずに、薬に関して気になることがあれば薬剤師に相談してみることが、ポリファーマシー脱却のひとつのきっかけになるかもしれません。
〈高齢者における「脱ポリファーマシー」の重要性とその方法を踏まえた上で、吉村医師が、高齢者が服用に当たって特に注意を払うべき三つの薬を紹介する。〉
まずは降圧剤です。文字通り、血圧の上昇を抑えるために服用する薬ですが、服用し続けることによって逆に血圧が下がり過ぎてしまうことがあります。その結果、立ちくらみが起きたりして転倒につながる。これが怖いのです。
若い人は転んだところで大きな問題にはならないかもしれませんが、高齢者は転倒による骨折リスクが高く、股関節周りなど下半身の骨を折ってしまうとそのまま寝たきりになってしまいかねません。したがって、年齢を重ねて体力の衰えを感じたら、降圧剤の服用は見直すべきだと考えます。
本末転倒な事態にも
次に糖尿病治療薬です。血糖値を下げるために使用される薬ですが、逆に血糖値が下がり過ぎて低血糖になることがあり、降圧剤の話と同じようにふらついて転倒につながってしまったり、また重い低血糖は脳梗塞や心筋梗塞、認知機能低下のリスクを高めるとも指摘されています。
そして三つ目は抗血栓薬です。脳梗塞や心筋梗塞を予防するための「血液をサラサラにする薬」ですが、血流が良くなるということは反面で出血しやすくなることを意味します。
そのため、何かの拍子に頭を打ってしまい、外からは見えない頭蓋内出血が進行し、脳内に細かい血腫ができて重篤な症状につながる恐れがある。つまり、脳梗塞の予防のために抗血栓薬を飲み始めたら脳出血になってしまった、という本末転倒な事態になりかねないのです。
減らすべき薬の服用は減らして、取るべき栄養の摂取量はしっかりと増やす。これが人生100年時代をより良く生きるための健康新常識です。波平さんもあと約半世紀生きる時代なのです。「その場しのぎ」ではなく先々を見据えた健康対策を行うべき時代に、私たちは生きているのです。
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