薬は何種類から害になる? たんぱく質は1日何グラム必要? 高齢者に必要な「増食」「減薬」を指南

ドクター新潮 ライフ

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「根拠なきデマ」

 また、たんぱく質の「量」だけでなく「質」も大切です。食事からしか摂取できない九つの必須アミノ酸をバランスよく含んだ、「アミノ酸スコア100」の良質なたんぱく質を取ることがより望ましいといえます。

 例えば鶏卵です。かつては、「食べ過ぎるとコレステロール値が高くなるので卵は1日1個まで」という“常識”がまかり通っていました。しかし、いまではコレステロールを含む食品を摂取したからといって、必ずしも悪玉コレステロール値が上昇するわけではないことが報告されています。

 言ってみれば、卵は1日1個までというのは、おこげを食べると食道がんや胃がんになるといった類の「根拠なきデマ」なのです。事実、2015年以降は「日本人の食事摂取基準」からコレステロールの摂取量の目標値(これ以上は良くないという意味合い)は撤廃されています。

 したがって、脂質異常などを指摘されていない方であれば、低栄養を防ぐためには「1日1個」ではなく、「1食1個」の卵を食べ、良質なたんぱく質を取りたいところです。

 他には牛乳、牛肉、豚肉、鶏肉、あじ、いわし、鮭などが、アミノ酸スコア100の良質なたんぱく質を含んだ食材の代表例として挙げられます。

 なお、たんぱく質の摂取を意識した食事をし、「しっかりと食べる」ことを続けていれば、よほど偏ったメニューでない限り、ミネラルやビタミンなどの他の栄養も自ずと摂取できます。

副作用が全くない薬は存在しない

 これまで見てきたように、人生100年時代に高齢者がその後の人生をより良く生きるためには、とにかくたんぱく質を意識して多く取る。つまり、粗食信仰に基づいて食べる量を「減らす」のではなく、むしろ「増やす」ことで筋肉量の維持に努める。これがとても重要になってきます。

 そして、最近注目されている「80歳の壁」を超えるためには事前の助走期間が必要であり、遅くとも70代、できれば65歳から、「減らす」から「増やす」へのギアチェンジが必要だと私は考えています。

 一方、逆に人生100年時代の高齢者が「増やす」ではなく「減らす」ことを意識したほうがいいものもあります。薬です。

 もちろん、必ず服用しなければならない薬はありますが、他方で無闇に飲まず、減らすことができる薬もあるはずです。ポリファーマシー(多剤併用)、つまり薬を飲みすぎることでむしろ健康を害している恐れがあるからです。

 まず改めて理解しておくべきなのは、あらゆる薬には「効果(効能)」と「副作用」があるということです。副作用が全くない薬など存在しません。そして、高齢になればなるほど肝臓や腎臓の働きが衰えるため、薬の成分を分解する機能も低下し、効果よりも副作用のほうが大きくなるリスクがあります。したがって、若い頃と同じように薬を飲み続けることには注意が必要なわけです。

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