薬は何種類から害になる? たんぱく質は1日何グラム必要? 高齢者に必要な「増食」「減薬」を指南
高齢者のギアチェンジ
そうならないように、人生100年時代において大事なのは、可能な限りADL(日常生活動作)の低下を食い止め、QOL(生活の質)を維持することです。
そのためには、できるだけ自分で動けるように筋肉量を保つことが大切になります。それを阻害するのが「粗食信仰」なのです。
確かに、50代までであれば、さまざまな生活習慣病の引き金となるメタボは避けるべきであり、「太らない=健康」という認識で構わないと思います。
しかし、現代の高齢者の「入り口」である65歳以降は、自分で動ける体を維持することが、それ以降の人生のQOLを考えると何よりも大事になってきます。そのためには筋肉の元となるたんぱく質をたくさん取る必要がある。つまり、高齢者においてはメタボ予防の「過栄養対策」ではなく、フレイル予防の「低栄養対策」にギアチェンジしなければならないのです。
実際、日本心不全学会は2018年、低栄養は心不全の発症リスクを高め、予後も悪化させるとのガイドラインを示しています。また、たんぱく質の摂取量を20%増やすとフレイル発症率が30%下がることが予想される、といったアメリカの研究もあります。
体重1キロあたり1.5グラム
では、具体的にはどの程度、たんぱく質を摂取するのがいいのでしょうか。
欧米での研究報告などを踏まえると、最低でも体重1キロあたり1グラム、できれば1.5グラムを1日で摂取することが望ましいといえます。体重60キロの人であれば1日最低60グラム、1食あたりに換算すると20グラムはたんぱく質を取る必要があります。
例えば、朝ご飯に納豆1パックを食べたとします。粗食信仰に基づけば健康的な朝食に思えるかもしれませんが、それで摂取できるたんぱく質は7グラム弱に過ぎません。そこに約15グラムのたんぱく質が含まれる鮭の切り身を加えて、ようやく20グラムをクリアできます。
いちいちたんぱく質の量を計算しながら食事するのは面倒という方は、「手ばかり」が役に立つと思います。肉類や魚類など、たんぱく質を豊富に含む食材を、両手に載るくらいの量を1日で食べると、「体重1キロあたりたんぱく質1.5グラム」の目安量に近づくといわれています。
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