大国外交、思想統制の強化…「民主的に開かれた社会に向かって…」は“今は昔”の中国が行き着く先

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「広範な景気刺激策」を実施しても期待外れに終わる可能性

 米ゴールドマン・サックスは6月12日、「中国の不動産セクターは何年にもわたって『持続的な弱さ』に悩まされ、同国の経済成長の足かせになる」との見方を示した。

 住宅が売れないと、付随するモノやサービスの消費も伸びない。中国はバブル崩壊後の日本経済と同じ軌跡を辿り始めている可能性が高い。

 中国政府も重い腰を上げ始めている。人民銀行は6月13日、銀行間の流動性に影響する主要短期金利の引き下げを発表した。金融面から景気支援のシグナルが出たことで、広範な景気刺激策がなされるとの期待が高まっている。

 冒頭で挙げた会合で、政府高官が最も求めていたのは不動産業界の再生策だった。

 巨額の債務を抱えて2021年に経営危機に陥った中国恒大集団は、再建の目途がいまだに立っていない。今年3月に外貨建て債務の再建案を公表したものの、債権者との交渉が難航。資金繰りも悪化し、各地で建設工事が停滞している。他の不動産開発大手も厳しい経営状態に追い込まれている。

 このため、「インフラ投資を始め広範な景気刺激策が実施される」との憶測が流れているが、筆者は「期待外れに終わる」と考えている。

 経済対策を担う地方政府の財政が火の車だからだ。融資平台(地方政府が傘下に置く投資会社)が抱える債務が昨年末時点で59兆元(約1150兆円)に達している。過剰なペースでインフラ開発などを進めてきた結果だ(6月15日付日本経済新聞)。

 中国共産党は急速な経済成長を実現することで求心力を得てきたが、豊かさを実現することで一党支配体制の正統性を維持する手法は限界に近づいている。

 習近平氏はその打開策として、大国外交を政権の最優先事項に据えている節がある。だが、サウジアラビアとイランの関係正常化を仲介するといった外交の成果を大々的に宣伝しても、国内では一向に高揚感が生まれず、「笛吹けど踊らず」といった感じだ。

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