98歳の“看板娘”の健康の秘訣とは? 趣味は麻雀とシャンソン、朝食は「ビフテキ150g」

ドクター新潮 ライフ

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宿直室で徹マン

 職人さんや「ねえや」たちがいた商家に育ち、戦前に女学校を卒業。文化服装学院にも進むが、徴用逃れに文部省に勤める。敗戦の年の12月に退職し、店で「お砂糖をかけた小麦粉の団子」を作って売ったら長蛇の列。「私は売上金をたんまり持って、毎夕、銀座に繰り出し、宝塚、日比谷映画劇場、資生堂パーラーへ」。趣味人、開花だ。その後、店は弟夫婦が継ぎ、金子さんは店の2階に住みながら国立大学の庶務課に勤務。「あの頃、同僚と宿直室で徹マンしたものよ(笑)」。

 大学を定年退職して店に戻り、かれこれ40年。退いた弟夫婦に代わり、現店主のおいをサポートし続けているわけだ。とはいえ、シャンソンのレッスンに行き、帰りに仲間と行きつけの店で食事する日や、地域の健康麻雀教室に参加する日も少なくない。

「疲れちゃうからね、午後5時半に店を閉めたら、6時に寝ちゃうこともありますよ。いつもすぐに熟睡」

 悩む暇を自らに与えない、無意識の意識が働いているのか。夜中に目が覚めたら、油絵の絵筆を握る。ちなみに好きな食べ物は肉。お会いした日も「150グラムのビフテキ」が朝食だったそう。

井上理津子(いのうえりつこ)
ノンフィクションライター。1955年奈良市生まれ。京都女子大学短期大学部卒。タウン誌を経てフリーに。人物ルポや町歩き、庶民史をテーマに執筆。著書に『旅情酒場をゆく』『さいごの色街 飛田』『葬送の仕事師たち』『絶滅危惧個人商店』『師弟百景』など。

週刊新潮 2023年6月1日号掲載

特別読物「人に歴史あり共通項あり 86歳から100歳まで『介護保険』要らずの『生涯現役』は“来し方”に秘訣」より

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